長引く不況もどこ吹く風、昨今、回転ずし業界は絶好調だ。「おいしいものは高い」が社会の道理だが、そんな常識はお構いなし、「安くてうまい」を実現する回転ずしに、今日も長い行列ができている。
原価率を抑えるために、各社工夫を凝らし、最新の加工技術を用いて“食用不適”の食材からおいしいネタを作り出す技術も進歩している。たとえば東カナダ沖で捕れる「黒ミル貝」は、独特のくせがあり食用にはなり得なかったが、くせを抑え本来の味を前面に出す処理方法が研究され、商品化に成功している。
安い寿司を出せるもう1つの要因として、養殖技術の進化も挙げられる。この養殖技術により、かつての高級ネタも、安価で提供できるようになったという。そのひとつが、赤貝だ。
赤貝の歴史は興味深い。回転ずし店の商品担当者が語る。
「かつては東京湾が天然赤貝の本場でした。ところが、回転ずし業界がアッという間に捕り尽くし、30年ほど前から韓国沿岸に大量に生息する赤貝に移り、それも捕り尽くしてしまった。次に中国の天然ものを使ったが、こちらも捕り尽くして、新たな生息地を求めてベトナム沿岸にまで産地が移った。しかし、近年になって養殖技術が確立。今では韓国、中国での養殖ものが主になっています。
最近、回転ずしチェーンで、高級だったはずの赤貝が100円や150円で食べられるようになっているのにお気づきでしょうか? それは養殖が実現したからです」
養殖技術進化の恩恵にあずかり、今日も私たちは「安くてうまい」すしを堪能することができるのだ。
※女性セブン2019年8月22・29日号