建築士の仕事も、役所がAIを導入すれば、大幅に軽減される。シンガポールの建築確認は、役所にCADの設計図面を電子申請すれば、AIが確認して数分後にイエスかノーかの判定が出る。イエスなら翌日から着工できる。
実は、シンガポールのシステムは日本企業が作ったものである。ところが日本では、いまだに紙の設計図面と書類を役所に提出しなければならないわけで、これは全く意味不明だ。建築基準法は日本全国同じであり、容積率と建蔽率が地域や地区によって異なっているだけだから、シンガポールと同じシステムを簡単に導入できるはずである。しかし、そうすると建築確認を担当している役人が不要になってしまうから、役所は知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいるのだ。
まだ「第4の波」の入り口にすぎない
いまや医師の診療もAIを活用すればオンラインで簡単にできてしまう。実際、中国では新型コロナ禍で医師との対面診療が難しくなったこともあり、ネット病院のオンライン診療が当たり前になっている。
日本でも新型コロナ対策の中でオンライン診療の活用を促進する方針が閣議決定され、これまで普及の妨げとなっていた「対面診療」の必要性が大きく規制緩和された。しかし、まだオンライン診療のサービスは少なく、中国に大きく後れを取っている。
また、薬剤師の仕事はAIと調剤ロボットによって、すでにほぼ自動化されている。かつてのように上皿天秤で薬の重さを量って調合する必要はなく、処方データを入力するだけでコンピューターが薬品を選択して秤量を行ない、配分、分割、分包までロボットが人に代わってやってくれる。ただし、薬局の薬剤師は厚生労働省の省令により、1日平均40枚の院外処方箋に対して1人以上配置しなければならないという規制がある。だが、実際には薬剤師の資格を持ちながらも調剤業務に従事していない人がたくさんいて、その人たちが薬局やドラッグストアなどに名義を貸しているのが実態であり、それも調剤ロボットがあるから可能になっているわけだ。
教師に至っては、各科目が全国1人で事足りる。時間からも場所からも解放されるAI・スマホ社会では、世界で最も優秀な先生の教えを、いつでも、どこでも、誰でも学ぶことができる。ミルトン・フリードマンのマーケット・メカニズムやフィリップ・コトラーのマーケティングを学びたければ、ネットで本人の講義映像を視聴すればよいので、彼らの著書の読み合わせをしているだけの日本の“輸入学者”は1人残らず無用になるのだ。