当然ながら、病気の種類によって“かかるお金”も“かけるお金”も変わってくる。がん・心疾患・脳血管疾患の三大疾病は入院後も治療が長引きやすく、医療費自体がかさむ。また、治療方針によっては、保険適用外の高額な先進医療を受けるケースもある。たとえば、がん患者が放射線治療のひとつである「陽子線治療」を希望すれば、その技術料の平均は1件あたり約265万円【*】かかる。
【*中央社会保険医療協議会「令和3年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」より】
黒田さんの場合、がんの切除手術をはじめ、自由診療の乳房再建手術、入院中の家族の外食費や交通費、がんについて学ぶための書籍代といった雑費なども合わせると、2年間で約300万円かかったという。
「がんでいえば、部位とステージ、再発の有無、本人の治療に対する価値観によってかかる費用に大きな差が出ます。入院中のベッドも個室を望めば費用は跳ね上がります。ただ、健康保険の適用範囲内で充分だという人は、高額療養費制度の範囲内で収められ、数十万円で済みます」
貯金があれば民間の保険は必要ないが…
一方、社会保険労務士の井戸美枝さんはこう話す。
「私の夫は、68才のときに足を骨折して手術し、40日間入院しました。そのとき病院に払ったお金は25万円程度。健康保険は3割負担でしたし、高額療養費制度も使いましたが、雑費がかかりました。たとえば、新型コロナウイルスの感染対策でパジャマなどの持ち込みができず、有料レンタルサービスを使わざるを得なかったのです。これは意外でした」