また、日本株を巡る需給の悪さにも留意したい。10日時点の裁定取引に係る現物ポジションは1兆4587億円と昨年8月半ば以来の水準で、直近3年の中では最も高い水準に当たる。売り残を差し引いたネットベースでも同様の状況だ。東京証券取引所による低PBR・低ROE企業への改善要請や3月期末に向けた配当権利取りなどを要因に、10日の3月限株価指数先物・オプション取引の特別清算指数算出(メジャーSQ)にかけて海外投資家が先物買いを加速させたことが背景にあるのだろう。一方、3月第2週(6-10日)の海外投資家の現物売買動向については1兆1164億円と大幅な売り越しだった。
先週からの日本株の相対的な弱さは、こうした足の速い資金が流出していることの証左だろう。積み上がった裁定買い残の解消余地はまだ残されていると推察され、需給悪は当面日本株の上値抑制要因となりそうだ。他方、3月期末に向けた配当権利取りの動きの復活が下値を支えることに期待したいところだが、先週は鉄鋼、非鉄金属、卸売(商社)、海運など先週まで強かった銘柄が軒並み急落し、弱い動きが最後まで続いた。金融システム不安にもとづく景気後退懸念が緩和されない限りは、権利取りの動きが力強く復活することは期待しにくいだろう。
個別では、世界的な景気後退懸念を背景に金利の先高観が大きく後退したことから、景気・為替との連動性の低いサービスや情報・通信といった内需系グロース(成長)セクターが相対的に優位な展開を予想する。また、先行き不透明感がくすぶる中、原材料高の一服と値上げ傾向による業績改善期待が高い食料品や、中国経済再開の恩恵が大きいインバウンド関連、ディフェンシブ性の高い医薬品、ディフェンシブ性に加えて円安一服も業績改善につながる電気・ガスなどの買い安心感が強いと想定する。
なお、今週は20日に日銀金融政策決定会合の主な意見(3/9-10日開催分)、21日に米FOMC(-22日)、米2月中古住宅販売件数、22日にパウエルFRB議長会見、23日に英国金融政策委員会、24日に2月全国消費者物価指数、米2月耐久財受注、米2月製造業購買担当者景気指数(PMI)、などが予定されている。