少子高齢化が進む日本で、本来は財産であるはずの不動産が、“負動産”として重い負担となるケースも少なくない。この問題を甘く考えていると、「売れない・貸せない・自分は住まない」という状態になり、相続後に税金や費用増加で首が回らなくなることもある。特に、負動産問題になりやすいのは地方の実家や郊外の一戸建てだ。
両親の死後、神奈川県郊外のニュータウンにある瀟洒な一軒家を相続したAさん。すでに還暦を過ぎて実家に住む予定はなく、売りに出すことにしたが、バブル時代なら新築1億円をつけた物件の査定額は、アクセスの悪さなどから1800万円まで抑えられた。
観念して売りに出したが問い合わせもなく、やむなく家屋を解体して更地にすることに。しかし解体のハードルは高かったと、Aさんから相談を受けた『負動産地獄』の著者でオラガ総研代表取締役の牧野知弘氏が語る。
「人件費や解体費が高騰し、床面積100~200平米の一軒家を解体するのに150万~200万円かかる。しかも1戸につき330平米までの住宅用地は『住宅用地の特例』が適用されて固定資産税の負担額を最大6分の1まで減額してくれますが、家を解体したら特例が適用されず、税金が跳ね上がります。
自治体によりますが、年10万円ほどで済んでいた固定資産税が年40万から50万ほどになる可能性があり、更地にしても売れないリスクも考えられる。数年売れないだけでも負担はゆうに300万円を超えます」
解体が難しい反面、維持するにも相当なコストがかかり板挟みになる。
「近隣に迷惑をかける可能性がある『特定空き家』と判断されたのに放置していると、行政代執行で100万円単位の解体費用を請求される恐れがあるので、所有者はお金をかけて空き家を管理する必要がある。固定資産税や火災保険料、水道光熱費や庭木の整備費といった維持費がかかり続けます。実際にAさんは相続後に年15万円の固定資産税を請求されて頭を抱えていました」(牧野氏)
さらに政府は空き家対策の強化を進めている。今国会では管理不全の空き家に対して「住宅用地の特例」を解除できることを盛り込んだ「空家対策特別措置法」が提出されている点も注意したい。