春は新しいことが始まる季節。しかし、年齢を重ねると新しいチャレンジに尻込みしてしまう人も多いだろう。「老けた」と言われるのは嫌だが、若作りも痛い。新しいことを始めたいけれど「年だから」踏み出せない……。中高年に立ちはだかる「年齢の壁」をどう乗り越えればよいのか。声優の日高のり子さん(60)に、話を聞いた。
「声優ですから、『年なのでこの声は出ません』は許されません。私の場合、体のコンディションを整えることが生活のモチベーションにもなっています。若く見られることよりも、元気でいることの方が大切だと思っています。
ナレーションの仕事は、2~3時間原稿を読みっぱなしということも多いので、最後の1行を読み終えるまで疲れを感じない自分でありたいんです。還暦を過ぎ、可動域を広げて動かしやすい体にしておくためにジムにも通っています。
そのうえで、元気に見えるには髪に艶があった方がいいからトリートメントをしようとか、顔のしわはしかたがないけれど、せめてお肌はきれいに見えるようお手入れしておこうとか、年齢を受け入れつつ、その範囲内で頑張るという考え方ですね。
ジムに行くと、年上の女性が、私よりも重い負荷をかけたトレーニングをされていたり、杖をつきながらリハビリに励んでいたり、みなさんとても生き生きとしていて、そういう姿が私には素敵に映ります。
同様に、家事を極めたおばあちゃんの本や、50代で英語を習い始め、80代でイギリスにひとり旅をした女性の本を読んで、すごく感銘を受けました。年を重ねてから何かを追求するのって、自分が本当にやりたいことでしょう? そういう人は格好いいし、幸せそうだし、励まされますね。
触発されて梅干しも作りました。英会話も、時間ができたら始めたいので準備だけはしていますよ(笑い)」(日高さん・以下同)
『タッチ』の浅倉南に『となりのトトロ』の草壁サツキ、『らんま1/2』の天道あかね、『犬夜叉』の桔梗、『名探偵コナン』の世良真純、『呪術廻戦』の九十九由基など、代表作は枚挙にいとまがない。
その透明感のある優しい声を維持するのは、ストイックなケアの賜物なのだろうと思いきや……。