「成功するためには、人生の土台を合理的に設計するといい」と語るのは、新刊『シンプルで合理的な人生設計』が話題の作家・橘玲氏だ。同書の中でも述べられている「合理的な人生設計」とはどのようなものか、橘氏に話を聞いた。
「外交的な性格なら成功できる」わけではない
──本書を着想したきっかけを教えてください。
橘:世の中には“成功法則”を説く本がたくさんあります。ただ、もし誰にでも通用する成功法則があるのなら、1冊で足りるはずなのに、なぜこんなにもあふれているのかと疑問に思ったのがきっかけです。
有名な自己啓発本を読んで人生が変わるような体験をするひとがいる一方で、ぜんぜん役に立たないとがっかりするひともいる。これはパーソナリティ(性格)にちがいがあって、それが成功法則の「向き」「不向き」につながっているからではないか。
「外向的」か「内向的」かはもっともよく知られているパーソナリティですが、ほぼ半分は遺伝の影響であることがわかっています。政治家や起業家、芸能人、スポーツ選手など、世間的に「成功者」とされるひとたちを見ると、外向的なひとが圧倒的に多い。そこから「もっと積極的・外向的な性格になれば成功できる」という話になるわけですが、パーソナリティは(ほぼ)変えられないので、生来、内向的なひとにこのようなアドバイスをしても無理な話でしょう。
そもそも、「成功者に外向的なひとが多い」が事実だとしても、「外向的な性格なら成功できる」という因果関係にはなりません。外向的なひとは強い刺激を求め、リスクをとってチャレンジする傾向があるので、大成功することもありますが、その背後には失敗して消えていった膨大なひとたちがいる。一方、内向的なひとはなるべく強い刺激を避けて、堅実な道を歩もうとする。これは、どちらが優れているという話ではありません。
アメリカでは大まかに、白人は外向的、アジア系は内向的とされますが、アジア系アメリカ人の世帯収入は約10万ドル≒1300万円で、白人の世帯収入約7万5000ドル≒980万円より3割以上も高くなっています。これは顕著なちがいなので、近年では「内向的な方が経済的に成功できるのではないか」といわれています。
流行のファッションが誰でも似合うわけではないように、個々のパーソナリティによって成功法則はちがう。それを前提にしたうえで、すべてのひとに通用する成功法則はないかと考えたのが、本書を書くきっかけでした。