子供は受け継ぎたくなくても、親がその土地に思い入れが強いとさらに厄介だ。
「子供たちは“親が生きているうちに手放してほしい”と思っているのに、親が“残したい”というケースもある。親の死後にその家を貸し出せればいいのですが、古い物件だったり交通の便が悪いと借り手がつきにくいので親の死後1~2年経ってから費用をかけて取り壊すパターンが多いです」(植崎氏)
不動産に対する考え方は家族内でも異なり、離れて暮らしていれば意思の疎通も難しいため問題が生まれやすい。
「母親が保有する都内の一等地に、3人姉妹の長女が長らく母親と住んでいるというケースがありました。数億円はする土地・建物なので母親が亡くなったら相当額の相続税がかかるはずですが、親と長女には家を処分したり何か手を打つ様子が全くなかったという。そうこうしているうちに相続の権利を持つ次女が先に亡くなり、代襲相続(注:相続人が亡くなっている場合、相続人の子や孫が代わりに相続すること)で次女の子供が相続する権利を持つのですが、伯母である長女と会ったことはおろか、ほとんど話をしたことすらないとのことでした」(同前)
こういったケースは少なくなく、「持ち主である母親が亡くなった後のことの話し合いもできないうえ、老いた長女を家から追い出すような選択も難しいでしょう。何もできずに相続を迎え、相続税と固定資産税の負担がのしかかる可能性がある」と植崎氏が続ける。
イラスト/河南好美
※週刊ポスト2023年4月21日号