全国的な空き家の急増を受け、政府は2015年に「空き家問題対策特別措置法」を施行。倒壊の危険や、著しく衛生上有害となる恐れがある、または著しく景観を損なうなどの基準で自治体から「特定空き家」に認定されると、従来の固定資産税の「住宅用地としての特例」から除外され、税額が最大6倍になることもある。さらに今後「特定空き家」の網を広げるべく、制度変更が行なわれようとしている。
こうした動きの背景に、“地方の実家”が誰にも管理されず空き家となるケースが全国各地で増加し、治安上や衛生上の不安から大きな社会問題と化していることが挙げられる。
放置すれば多額の費用負担を招きかねない空き家の所有。手遅れの事態を招く前に、打つ手はないのか。不動産コンサルタントの長嶋修氏はこう言う。
「一番のお勧めはズバリ早期の売却です。今後、都心や都市部の一等地以外は住宅価格の下落が予想され、郊外のベッドタウンなどは年3~4%下落してもおかしくありません。売値は『今』が一番高いと考え、利用予定がなければ早期に売却するのが得策でしょう」
所有する空き家を売却して利益が出た場合、現在であれば譲渡所得税がかからない「相続空き家の3000万円特別控除」が利用できる場合がある。税理士の山本宏氏が解説する。
「一定の要件を満たし特例が利用できれば、都心の一等地を除きほとんどのケースで譲渡所得税はゼロで済みます。同特例は今年末までの時限措置でしたが、4年間延長されました。空き家を処分するなら早いほうが有利な理由の一つです」
ひと口に空き家と言っても、売れるか売れないかは物件次第だ。住宅ジャーナリストの山下和之氏はこう言う。
「比較的築年数が浅い物件で、交通アクセスや生活に便利な施設が近いなど好条件かつ、建物の維持管理状態が良ければ、そのままの状態で買い手が付く可能性があります」
空き家売却の成否の鍵を握るのが、依頼する不動産仲介会社だ。
「もっとも重要なのは、複数社から見積もりを取ることです。全国に支店を持つ大手だけでなく、空き家の所在地に足を運んで地元に強い業者を探す。管理物件や看板の多い会社を辿っていくと、地元に優良顧客を抱える業者を見つけられる可能性が高まります」(同前)