それでも売れない物件の「奥の手」
もちろん、市場で買い手が付くとは限らない。
「立地に問題はなくても、建物の老朽化が激しければ売れないケースがある。その場合、建物を解体して更地にすれば売れることもありますが、解体費用や固定資産税の負担が重くなる。どこまで売却前にコストをかけるべきか、現実に合わせた冷静な判断が必要です」(同前)
売却する際の相談先を仲介業者ではなく「買い取り業者」とする選択肢も時には有効だ。
「売主から直接物件を買い取り、リフォームして再販売したり、賃貸に回すなどして利益をあげるのが買い取り業者です。価格は相場よりはるかに安いかもしれませんが、解体費用が出ても業者持ちになり、仲介手数料などの経費もかかりません。売値は二束三文でも、空き家を所有し続けるリスクから解放されるメリットがあります」(長嶋氏)
それでも売れない物件はある。長嶋氏が「奥の手」と紹介するのは、不動産の無償譲渡だ。
「隣家の所有者に贈与する方法が考えられます。空き家の解体費用や不動産登記費用を負担する前提で相談すれば、引き取ってくれる可能性はあるでしょう」(同前)
さらに、今年4月27日からは、相続した不要な土地を「有償」で国に引き渡すことができる制度が始まる。
「これまでは相続財産に不要な土地があっても、その土地だけ相続放棄することはできませんでした。それが、今月始まる『相続土地国庫帰属制度』では、相続し持て余している土地を国に引き渡すことができます。ただ、要件がかなり厳しく、手数料など数十万円以上の負担金が発生することに留意する必要があります」(山本氏)
※週刊ポスト2023年4月28日号