不本意入学の意識を保護者が植え付けているケースも
大学側も、こうした不本意入学の学生の問題は認識しており、早い段階からケアを行っているケースもある。ある私立大学の学生相談の担当スタッフ・Bさん(50代女性)は、こう話す。
「4月、5月の時点で授業にほぼ出てこない学生、あるいは授業で著しく態度が悪かったり、他の学生とまったく会話をしないといった学生には、注意を払っています。教授たちから気になった学生について報告がある場合もありますが、学生本人から相談に来ることもある。大事なことは、とにかく早期に対応することだと考えています。
まず『仮面浪人』『退学をして再受験』などの意志があるのかを本人に確認します。なかには『もう受験はしたくない、でもこの大学に通うのも嫌だ』というパターンもある。自分以外の学生や教員に強い偏見を持っていることもあります。そのような学生とゆっくり時間をかけて対話し、ときには保護者の方とも連絡を取り合いながら、これから先どのような選択をしていくのかを決定します」(Bさん)
Bさんは、学生自身はもとより、家族の対応も肝心だと続ける。
「不本意入学の意識を保護者が植え付けてしまっているケースは少なくない。志望校に合格できずに、それ以外の大学に進学した場合、親が学生に『お前はバカだからそんな大学にしか行けなかったんだ』とか『だから指定校推薦で受けろと言ったのに!』『恥ずかしくて近所の人たちに、子どもの進学先を言えない』などの発言をしたという例があります。そのような発言から、子どもに不本意入学の意識が芽生えてしまう。
大事なのは『どの大学に合格したのか』ではなく、大学時代にどう過ごすかではないでしょうか。子どもの自尊心や挑戦する気持ち、新しい場所で努力しようとする思いを挫くのが保護者であってはならないと感じます」(同前)
いま、まさに不本意入学の意識を持っている大学1年生もいるかもしれない。自分が置かれた状況を受け入れることが難しく、大学に通うことがつらいという場合、まずは大学の相談窓口や信頼できる大人、大学教員などに相談してみることも考えてほしい。(了)