メガバンクが有力か
本誌・週刊ポストは3人の専門家にバフェット氏の次なる投資先として考えられ得る銘柄を予測してもらい、一覧表に示した。バフェット氏には、長年の経験で培った独自の「投資哲学」がある。
主な投資企業の条件は「株価が割安であること」と、「事業内容が理解できること」。割安かを示す指標の一つにPBR(株価純資産倍率)があるが、日本では上場企業の半数以上が1倍未満で、企業価値に比して市場からの評価が低すぎるとされる。
バフェット氏の基準はほかにもある。「バフェット氏の投資の4割を占める米アップルのように、着実な利益を長年生み出し、株主還元に多く充てている銘柄が好まれる」(戸松信博・グローバルリンクアドバイザーズ代表)という。
自己資本に対する当期純利益の割合から算出されるROE(自己資本利益率)は企業の“稼ぐ力”を表わす重要指標だが、それが改善しているかどうかも目安の一つだ。
戸松氏は、総合商社に続くバフェット氏の新たな選択肢をこう予測する。
「個人的にはメガバンクではないかと推測します。欧米の銀行危機が次に起きて大きく下がれば、本来それに関係なく、事業内容がしっかりしているメガバンクがお買い得になるからです」
三菱UFJやみずほは株主還元にも注力して配当利回りが4%前後と高く、注目される。またバークシャーは傘下でエネルギー事業を展開しており、カブ知恵代表の藤井英敏氏は原油ガス開発国内最大手のINPEXに注目する。
「バフェット氏が米エネルギー企業や日本の5大商社株に注目するのは、世界的な人口増加に伴う旺盛な化石エネルギー需要がまだ続くと見ているからでは。同社は配当利回り4%以上と高く、PBR0.51倍と割安感が強い」
日本金融経済研究所代表理事の馬渕磨理子氏は、バフェット氏がもたらす影響は日本市場全体にとって大きいという。
「バフェット氏は世界中の機関投資家・個人投資家にとっての指標であり、その視線の先に日本企業があることが世界に伝われば、日本全体に追い風となる。商社で起きた動きが日本の他企業、さらには相場全体を押し上げる可能性もあります」
はたしてバフェット氏はどう動くのか──。
※週刊ポスト2023年5月5・12日号