早期の解散総選挙後に増税論議も
しかし、少子化対策の財源とするために消費税を引き上げるとなれば、政治的なハードルは高そうだ。岸田文雄・首相は2021年9月の自民党総裁選で消費税について、「10年程度上げることは考えていない」と述べている。昨年11月の国会答弁でも、総裁選当時の考え方から「変わっていない。上げることは考えていない」としている。
ただ、そのスタンスには微妙な変化があるのか、今年3月に参院予算委員会で日本維新の会の片山大介・参院議員から、少子化対策の財源として消費税などを増税する考えがあるのかと問われると、岸田首相は「この時点で申し上げることは控えなければならない」という答え方をしている。ベテラン政治ジャーナリストはこう話す。
「総額8兆円ともされている少子化対策の予算を賄ううえでは、消費増税の議論は避けて通れないでしょう。財務省も増税なしにそんなバラ撒きができるとは考えていないはず。問題はいつ、どのようなかたちでそれを持ち出すか。
4月23日投開票だった衆参の補選が自民党の4勝1敗という結果になり、早期解散論も現実味を帯びてきている。5月のサミット閉幕後に解散して総選挙で勝利し、その後に消費税を含めた増税論議を持ち出すというシナリオではないか。十倉会長の発言は、その地ならしになっているようにも見える」
財界を代表する立場の十倉氏は日経新聞のインタビューのなかで、少子化対策の財源で「法人税」も議論の対象になるとしながらも、税収などが「景気の波で不安定になる部分もある」と前向きではなかったという。政財界のこうした動きは、どこまで国民の理解を得られるものなのだろうか。その行方が注目される。