やがて300万部も割ってしまう
私は朝日の現場で働く記者たちは、頑張っていると思います。しかし、新聞経営を取り巻く大きな流れは、記者たちの努力云々をはるかに超えた問題になっています。このままいけば、やがて300万部も割ってしまうでしょう。覚悟を決めなければならない時が来たと思います。
経営規模の縮小は避けられず、いずれは全国紙の看板を下ろさねばならなくなる日が来ると思います。そして、これまで大部数を支えてきた各地の販売店の苦衷は察するに余りあるところです。
しかし、今後も新聞が果たすべき重要な役割は変わりません。政治と行政へのうるさい監視役であることです。電波法と放送法で政府に首根っこを抑えられているテレビ局にはできない権力の監視役に徹することしかないと思います。
これまで朝日新聞は、長年購読してくれているコアな読者を大事にしてきたと言えるでしょうか。読者からの批判、意見、要望を日常的にくみ上げる仕組みを工夫するなど読者との関係を濃密にし、規模を縮小化して堅固なものにした経営体への転換を図って生き残ってほしいと思います。人件費抑制のため希望退職の募集などを実施していますが、将来を見据えるのであれば、有為な人材を確保しておくことも大事だと思います。
【プロフィール】
落合博実(おちあい・ひろみ)/1941年、東京都生まれ。産経新聞社記者を経て、1970年に朝日新聞社に入社。主に大蔵省(現・財務省)と国税庁を担当し、ソウル地下鉄疑惑(1977年)、三菱商事・創価学会ルノワール疑惑(1991年)などをスクープ。2003年、朝日新聞社を退社。近年はフリーランスとして活動している。著書に『国税庁の研究 徴税権力』など。