ゆるキャラブームによって一部のご当地キャラが持て囃され、巨額の経済効果をもたらした一方、その影には多額の税金を投じたものの日の目を見ずに消えていった数多のキャラクターたちが存在する。天国と地獄の分かれ道は一体どこにあったのか話題の新刊『マネー格差の天国と地獄』(ニューノーマル研究会・編)から、ゆるキャラたちの悲喜こもごもをレポートする。
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大阪・関西万博の開催が2年後に迫る中、公式キャラクターとして誕生した「ミャクミャク」の姿をメディアで見かける機会が増えている。何か大きなイベントがあれば、当たり前のように誕生するゆるキャラたち。成功例の筆頭といえば「くまモン」だろう。
2010年、熊本県のキャラクターとして誕生したくまモンの経済効果は、他と一線を画す。「ゆるキャラグランプリ2011」での優勝をきっかけに全国区になって以降、関連商品の売上高は年間1600億円。これまでの累計は1兆円を超えるという。
その人気は海外にも波及。国内ブームに追随する形で中国、韓国、タイなどアジア圏を中心にファンを獲得し、コラボイベントや商品を発売。億単位の経済効果を叩きだした。外国視聴者の目線や嗜好に合わせて編集された海外向けYouTubeチャンネル「KUMAMON Global Official」では400万回以上再生された動画もある。
くまモンが大成功したのは、誰にでも愛されるデザイン性だけでなく、キャラクター利用料を無料にし、簡易な審査で使えるようにした点も大きいだろう。その人気は緻密な計算や企画力のもとに成り立っているのだ。
一方、ブーム以降に誕生し、大金を注ぎ込んで展開したにも関わらず、箸にも棒にもかからなかったゆるキャラも中にはある。
そもそものブームの火付け役は2007年に開催された「国宝・彦根城築城400年祭(滋賀県彦根市)」のマスコットキャラクターとして誕生した「ひこにゃん」だ。愛らしい猫が長い角の生えた兜をかぶった姿が人気を博した。
2016年「地方創生推進交付金」として年2000億円の交付が開始されると、ゆるキャラ開発が加速した。その結果、全国で1700体以上のキャラが生まれたが、前出の「くまモン」や「ひこにゃん」、しゃべるゆるキャラとしてテレビのバラエティ番組などにも引っ張りだこだった「ふなっしー(船橋市非公認)」のような知名度を得ることはできず、「税金の無駄遣いだ」と揶揄されることもあった。
2011年から毎年開催されていた「ゆるキャラグランプリ」も年々話題に上らなくなり、2020年にひっそり幕を閉じている。「第2のくまモン」を目指した奮闘も虚しく、スポットライトを浴びることなく消えていこうとしているゆるキャラは数知れない。
※『マネー格差の天国と地獄』(ニューノーマル研究会編・小学館)を元に構成