いま、相続に関する不動産のルールが大きく変わろうとしている。ひとつが4月27日にスタートした「相続土地国庫帰属制度」。そしてもうひとつが、来年4月からの「相続登記の申請の義務化」だ。これまで任意だった相続登記が義務化され、不動産の名義変更の手続きをしなければ、場合によっては10万円以下の過料(行政上の罰)が科せられることもある。何年も前に親が亡くなって実家の土地を相続したけれど、登記も変えず放置しているという人も対象になるので注意が必要だ。義務化の背景からその内容について、不動産法制に詳しい荒井達也弁護士に、話を聞いた。
相続登記をしないと10万円以下の過料
「義務化の背景にあるのは“所有者不明土地”問題です。誰の土地なのかわからない、あるいはわかっていても連絡がとれない、そんな所有者不明の土地が増加し、社会問題になっています。これ以上、所有者不明の土地を増やさない、所有者不明土地をなくしていこうというのが、今回の法改正の狙いです」(荒井達也弁護士、以下同)
所有者がわからず、管理されない土地は次第に荒れ果てていく。周辺の環境や治安にも影響を与え、誰の土地かわからなければ、防災やまちづくりのための開発を進めることもできない。そんな土地が、じつに国土の約24%超と、九州の面積に匹敵するまでになっており、国も対策に乗り出したというわけだ。
その内容の主なポイントは以下のとおり。
・相続により不動産を取得した相続人は、所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない
・正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科される可能性がある
・法改正以前に所有している相続登記の変更が済んでいない不動産についても同様
気になるのは、やはり「10万円以下の過料」だ。過料を免れる「正当な理由」はどのようなものか。