「たとえば、ひいおじいさんの代から名義が変わってなくて、相続人が多すぎて書類を集めるのが大変だとか、遺言はあるけれど本当に故人の意思によるものか怪しいというケース。他には、遺産の範囲で相続人が揉めている場合なども当てはまります。あとは、相続人自身が病気で入院中といったケースも正当な理由と判断されます」
ただし、こうした正当な理由がなく、3年たって登記をしていないからといって、いきなり10万円が請求されるわけではないとのこと。事前に法務局から通知が届き、そこで速やかに対処すれば、過料が科されることはないそうだ。
登記変更を先送りすると、子どもや孫に迷惑をかける
それでも、荒井弁護士は「10万円以下の過料があるかどうかではなく、登記変更をしておかないデメリットを考えたほうがいい」と指摘する。
相続登記をしないデメリットとして考えられるのは、「時間がたてばたつほど手続きが大変になる」ということ。ほかにも「売買ができない」や「担保に使えない」なども挙げられるが、それだけではない。
「登記を先送りして放置するということは、子どもや孫が預かり知らぬ土地を、知らない間に相続させる、ということです。もしもその土地で何か問題が生じたら、管理責任は土地の所有者=相続人にあります。『そんな土地のことはまったく知りません』といっても、権利者であることは明確で、否定しようがありません。相続登記をしないということは、子どもや孫をこうしたリスクにさらす、ということでもあるのです」
では、登記変更はどのように進めるとよいのか。
「手続きは専門家にお願いしたほうがいいかと思います。たとえば、家が建っている土地だけでなく私道の権利を近所の人と分割して持っている、というケースもあります。土地の所有は固定資産の納税通知で把握できますが、固定資産税がかかっていなければわかりませんし、名義変更の際にも見落としてしまいがち。かなりの時間がたっていたら、相続人全員から必要な書類を集めるのだけでも相当な大変です」