マネー

「ふざけるな!」少子化対策でさらなる負担増必至 税+保険料の国民負担率“50年で倍増”の歩み

経済界からは「消費増税」の声があがるワケ

 そうしたなか、財界からも社会保険料の負担が増すことについて慎重になることを求める声が出てきたが、こちらはその代わりに「消費税を財源に」と言い出している。4月26日、経団連は少子化対策など社会保障の財源について「社会保険料だけでなく、消費税を含めた様々な税財源の組み合わせによる新たな負担も選択肢とすべきである」とする報告書をまとめている。

 経団連の「消費税アップ」に前向きな姿勢が明らかになったことは過去にもある。たとえば2012年5月の提言「成長戦略の実行と財政再建の断行を求める~現下の危機からの脱却を目指して~」では、財政再建などのための改革推進を訴えるなかで〈消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%へ引き上げ、その後、2017~2025年度の間、税率を毎年1%ずつ引き上げ、最終的に19%とする〉という前提での試算を公表している。「消費税19%」に達することが、経団連の求める“改革”という内容の提言だった。

 消費税が上がれば消費は冷え込み、経団連を構成する大企業の業績にとってもマイナスに思えるが、なぜまた「少子化対策の財源は社会保険料だけでなく消費税を含めた税で」という議論が出てきたのか。大手紙経済部記者はこう言う。

「基本的に経団連の主張は消費税の増税と法人税の減税がセットになってきました。財政の健全化を求めつつも、大企業の利益を削りたくないということで、薄く広く国民の負担が増える方向を求める傾向が強い。昨年秋に防衛費増額のための財源に法人税が浮上すると、十倉雅和・経団連会長がすぐに会見で『(防衛費は)国民全体で負担すべき性格のもの。法人税の議論が先行するのはいかがなものか』と牽制したのがわかりやすい。

 また、社会保険料が引き上げられた場合、会社員の本人負担分だけではなく『企業負担分』も大きくなるというところがポイントなのでしょう。たとえば、厚生年金の保険料率は18.3%ですが、労使折半のため会社員の給与から天引きされるのは9.15%。残りの9.15%を企業は拠出するかたちになる。仮に少子化対策のために社会保険料が引き上げられるとしたら、それは会社員だけでなく企業にとっても直接的な負担増になる。そうしたことが、消費税を議論の対象とするように求める発言につながっているのではないか」

 とはいえ、前述の「国民負担率」の推移を見れば、国民所得に占める租税負担率にしても、1970年度の18.9%から、2023年度の28.1%へと大幅に増えている。そのうえさらに消費税などの負担を増やすとなれば、政府が国民の理解を得るのは、容易ではないだろう。(了)

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。