演出家でタレントのテリー伊藤氏(73)。多くの名物番組をプロデュースしてきたが、実は古希を前にしていま話題の「リスキリング(学び直し)」に挑戦していたのだという。『サンデー・ジャポン』(TBS系)などのテレビ出演を続けながら、心理学を学ぶために2017年9月に慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科に入学。コロナ禍で2年間の休学を挟んだものの、今年3月に無事修了した。
「リスキリング」という言葉は昨今、日本でも広く浸透してきた。今年1月には岸田文雄首相が通常国会冒頭の施政方針演説で「リスキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めるという三位一体の労働市場改革を、働く人の立場に立って加速します」と述べている。企業による取り組みだけでなく、芸能界でも小倉優子(39)が白百合女子大学に入学するなど、新たな学びに挑むタレントが増加している。
大学時代は“やり残した感”があった
テリー氏も高齢ながらそうしたリスキリングに挑んだ1人と言える。今回、テリー氏に学び直しを始めたきっかけについて聞いた。
「もともと日大の経済学部を卒業してるんです。でも20代の時は『経済学部なら就職しやすいだろ』くらいなもんで考えずに入るじゃない。それでいざ大学に入ったら、あの頃は学生運動が活発で頻繁にデモで休講になっていた。俺は洋服と女の子が好きでデートばっかりして、勉強はおろか学生運動にすら身が入ってなかったわけですよ。そんななか、学生運動に巻き込まれて目を大怪我して落ち込んだりもして……。大学時代は総じて“やり残した感”があったんです。特に50を過ぎたくらいからかな、『いつか大学に通い直したい』と強く思うようになったんです」(テリー氏、以下「」内のコメントはテリー氏)
60代に入って「心理学を学ぶ」という方向性が定まったのは、自身が関わる仕事のなかで多くの人から聞いた情報が参考になったという。
「ちょうど2015年で『スッキリ』(日本テレビ系)のレギュラーが終わったのもあって、“今だ!”って思いました。その後、東京オリンピック関連の仕事で広告代理店で働く気持ちのいい若者に出会ったんですよ。“君、どこの大学行ってたの?”って聞いたら“慶応のSFC(湘南藤沢キャンパス)です”って言うから、すぐに慶応を調べたんだよ。勉強する内容は、人の気持ちに興味があったから心理学がいいなと。それで慶応の教授が書かれた児童心理学の本なんかを読んで選んだのが、政策・メディア研究科。ほかの大学は候補になくて、ここ一択でした。
あと心理学を選んだのは長年『コメンテーター』をやっているけど、偉そうなことばかり語ってカッコ悪いなという思いがあった。世の中にはもっと物事を深く追求して学んでいる人もいるのに、俺は大したことないなと。時事問題に対してコメントするならば、今一度、人の心理なるものに対して、深いところから向き合いたいと考えたんですね」