「ジジイになるほど頭が固くなる」
そうして掲げ直した修士論文のテーマは、まさにテリー氏ならではの視点のものだった。
「やはりもう少し自分の仕事に関することやよく知る世界の事柄をテーマにしようと考え直し、思いついたのが自分のラジオ番組の仕事中も考えていたことでした。それは『ラジオ通販で高齢者はなぜ(商品を)見ずに購入するのか』です。テレビ通販の返品率は5%でラジオ通販の返品率は1%くらい。さらにネット通販は返品率が20%を超えるとも言われています。ラジオはやはり信頼があるんですよね。高齢者にとってラジオは青春そのものだから、そういう慣れ親しんだメディアというのも大きいと思う。そうした心理を掘り下げて研究しました。同じような先行研究もなかったし、先生方からも“テリーさんならではの視点で面白いです”と言ってもらいました」
このテーマで見事、論文をまとめたテリー氏。「やはりこれだ、というものを見つけた後は筆の進みが早く、10万字書いて、最終的に6万字に削ってまとめました」と振り返る。また、文章にまとめたことで自分自身にも新たな気づきがあったという。
「これは先生にも言われたことだけど、テーマは大きくない方がいいと。例えば“サラリーマンとは何か”というのは大きすぎる。でも“サラリーマンと電車の吊り革広告の関係”というテーマは研究になり得る。こういう当たり前の気づきを素直に受け入れることも学び直しの有り難さだと感じた。ジジイになればなるほど頭が固くなるじゃないですか。でも学ぶって要は自分にない視点をどこまで柔軟に受け入れられるかってことだと思ったんです」