競争率27倍以上の狭き門をくぐっても…
だからこそ競馬で一旗揚げたいと思う人間はJRAを目指す。しかし同会所属の騎手になるには競馬学校に入学し、養成期間を経て騎手免許に合格しなければならない。
もちろん簡単ではない。競馬学校騎手課程の令和5年度分の入学実績を見ると、192名が受験し、合格したのはたったの7人。競争率実に27倍以上だ。
こうした狭き門をかいくぐったとしても、JRA の騎手の全員が高収入生活を送ることができるわけではない。
「賞金ランク上位は進上金が1億円を超えますが、100位だと500万円程度です。146位以下は0円。騎乗手当と騎手奨励手当で稼ごうにも、実力も人気もなければレースに出ることすらできません」(同前)
厩舎に所属している騎手であれば、馬の世話などの雑務をこなすことで収入を得ることもできるが、フリーの騎手はJRAの厩舎が集まる茨城県南部の美浦村と滋賀県南西部の栗東市に日参し、自分を売り込む「ドサ回り生活」だ。
「競馬は人気商売です。武豊のように実力と人気が備わっている人であれば、乗ってもらいたいと思う馬主は多い。でも、無名で実力もなければ鞍にまたがることすらままならない世界なのです。さらにここまでお話ししてきたのは日本中央競馬会(JRA)の事情です。地方競馬に目を向けると内情はもっと厳しい」(同前)
全国の自治体が運営する地方競馬は相対的に賞金も低く、レースで勝っても騎手の手取りが数千円という例もある。
ただお金より競馬文化を楽しみたいという関係者やファンは多い。収入だけでは量れない世界だ。
※『マネー格差の天国と地獄』(ニューノーマル研究会編・小学館)を元に構成