この減少率は2016年から小さくなり始めており、2018年からは0.3%と小幅になる。今後はゆっくりではあるが、賃金や所得の改善がマクロ経済に反映されやすい環境になってくるだろう。
また、警察庁が発表している自殺者数を見ても、2015年は18年ぶりに2万5000人を割ったが、2016年の月次データを見るとすべての月で前年を下回っている。自殺には病気や悩みなどさまざまな背景があるため極端に減ることはないが、景気が良くなれば生活苦や資金繰りといった経済的な理由による自殺は着実に減っていくものだ。
金融機関に押し入る店舗強盗の数も、2016年は件数がゼロの月が9月までに3回あり、良いシグナルだ。ここ数年減少傾向が続いている東京23区のホームレスの数も、2016年は引き続き順調に右肩下がりで推移している。
身近なデータにも景気の底堅さは現われている。NHKの朝の連続テレビ小説の期間平均視聴率をみると、2016年3月に終了した『あさが来た』が23.5%、同9月に終了した『とと姉ちゃん』は22.8%と絶好調だった(いずれも関東地区)。
10月にスタートした『べっぴんさん』も初回平均視聴率は21.6%と好スタートを切っている。この3作品に共通するのは起業家がヒロインであることだ。こうしたドラマが支持を得る背景には、ビジネス上のチャレンジを応援する風潮があり、それが中小企業の設備投資の底堅さにつながると考えられる。
【PROFILE】たくもり・あきよし:さくら証券、さくら投信投資顧問のチーフエコノミストを経て、現在は三井住友アセットマネジメント理事・チーフエコノミスト。ESP景気フォーキャスト調査委員会(日本経済研究センター)委員、景気ウォッチャー調査研究会(内閣府)委員。著書に『ジンクスで読む日本経済』など。
※マネーポスト2017年新春号