派遣社員が職場での“理不尽な事情”から派遣契約を解除された場合、派遣元に給料の保障を求めることはできるのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
1年契約の派遣先で、ある男性社員と私が交際しているという嘘の噂を言いふらされる嫌がらせを受けました。そこで派遣元に相談しましたが、担当者が対応してくれなかったので本社に連絡。すると先の担当者から連絡があり、「現在の派遣先は終了となります。新しい派遣先を検討します」と言われました。3か月勤めた後に終了となったのですが、その後はいくら連絡しても新しい派遣先を紹介してくれません。派遣元に給料の保障を求めることはできますか。(神奈川県・39才・派遣社員)
【回答】
派遣労働には2種類あります。派遣元に登録しておき、派遣先が決まったときに派遣労働契約(労働契約)を締結する「登録型」と、派遣先の有無にかかわらず派遣会社に雇用される「常用型」です。登録型では、派遣先と派遣元が締結する労働者派遣契約(派遣契約)が前提になるので、労働契約の期間は、派遣の期間となるのが普通です。
ご質問の場合、派遣契約の期間が1年間で、労働契約もこれに合わせて契約期間が1年間とされていたものと思われるのでこの前提で検討しますが、労働契約締結前に労働条件の明示書が文書やメールなどで提供されているはずですから確認してみてください。
派遣契約と労働契約は、別個の契約です。派遣元とあなたが期間1年の労働契約を締結したのですから、有期労働契約として労働契約法17条が適用されます。同条では「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と定めています。そのためやむを得ない事由がない限り、派遣元は労働契約を解除できず、これにしたがってあなたに職場と給与を提供する義務があります。
「やむを得ない事由」とは厳しい縛りであり、会社の事業が継続できない事態になるような特別な事情が必要です。派遣契約との関係でいえば、例えば労働者に責任がある事故や行為が原因で派遣契約が打ち切られた場合であれば、派遣元は労働契約も解除(解雇)できる可能性があります。