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カリスマファンドマネージャーが解説! 効率経営への転換を図る大型株に妙味あり

大型株の銘柄選別方法は小型株と変わらない

私が運用責任者を務める「ひふみ投信」では、これまで小型株中心の投資戦略をとってきた。大型株が伸び悩むなか、われわれのように小型株中心で運用するファンドが勝ちやすい相場が続いてきたため、当然の判断だった。しかし、大型株にも効率経営が求められる趨勢となっている以上、それを無視するわけにはいかない。ひふみ投信の組み入れ銘柄も、結果的に大型株のウェイトが高まることになるだろう。

では、大型株の中では、どのような銘柄に目を向ければよいのか。

答えはシンプルだ。従来の小型株同様、経営者の資質を見極めればいい。とはいえ、個人投資家が腕力や先見性、リーダーシップといった経営者の資質を見抜くのはなかなか難しい。そこで、社長交代のニュースに常に目配りし、新社長がどういう人物と報じられているかくらいはチェックしておきたいところだ。あるいは企業のホームページで顔写真を掲載するなど、「会社の顔」としてわかりやすいかどうかも判断材料になるだろう。

加えていえば、ROEという指標が重視されてくるので、「経営の効率性」に関してどのような戦略を持っているかが重要となってくる。

裏を返せば、これまで効率的な経営ができてこなかった企業は狙い目といえるかもしれない。たとえば「ROEが5%以下」で「現預金を持っているキャッシュリッチな企業」で株価が冴えない銘柄はターゲットになり得るだろう。そのような企業に対しては、おそらくこの春以降、機関投資家を中心に市場から効率経営を催促される場面が増えてくる。そうした際に、経営方針を変革する意思を見せるような企業は、その後の株価上昇期待も高まってくるに違いない。

効率経営への転換図った富士フイルムHD

投資の参考として、ひふみ投信の組み入れ上位10銘柄(1月末時点)を紹介しよう(下表)。

従来、組み入れ上位は小型株が独占してきたが、3位の富士フイルムホールディングス(東証1部・4901)や10位の大林組(東証1部・1802)のような大型株も積極的に組み入れるようにしている。特に前者は、新中期計画で増配や株主還元策の強化に加え、ROE7%目標を表明するなど、効率経営を重視した経営への転換を図ったことが大きな選定理由といえる。後者はリニア新幹線や品川―田町間の新駅再開発などJR関連の大型プロジェクトに参画しているのが注目材料だ。

1位の千代田化工建設(東証1部・6366)も大型株だが、これは下落が続く原油価格の逆張りという意味合いで組み入れている。LNG(液化天然ガス)プラントで世界トップレベルの実績を持つプラントエンジニアリング会社であるため、原油安による業績への懸念から株価は下落基調にあるが、この先、原油価格が上昇に転じれば、株価も反発期待が高まる。同社は燃料電池車の登場で大きなテーマとなっている水素供給事業も手がけているため、長期保有にも適した銘柄といえるだろう。

そのような時流に沿ったテーマ性を持った大型株のほか、経営者の資質を見込んで投資している小型株も多い。

建機リースや足場などのレンタル・販売を行なう2位のエスアールジータカミヤ(東証1部・2445)は、創業者の高宮家のリーダーシップで業界をリード。7位のあい ホールディングス(東証1部・3076)も、佐々木秀吉会長兼CEO(最高経営責任者)の経営手腕により、防犯カメラシステム運営や屋外広告用のカッティング機器などの各分野で業界首位の座にある点を評価している。

その他、「ドーミーイン」ホテルを運営し、20年の東京五輪に向けた外国人観光客の増加が追い風となる6位の共立メンテナンス(東証1部・9616)、人手不足や人材流動化といったテーマで業績向上が見込める9位のテンプホールディングス(東証1部・2181)なども有望視している。

相場を取り巻く環境が激変するなか、株価変動も大きくなる展開が想定される。そのような相場だからこそ、独自の成長力を持つ企業はもちろん、積極的に生まれ変わろうとする企業を発掘していきたい。

 

藤野英人氏が運用する「ひふみ投信」の組み入れ上位10銘柄と選定理由(7月末時点)

 

組み入れ順位 企業名(市場・証券コード) 選定理由
1位 千代田化工建設(東証1部・6366) LNG(液化天然ガス)プラントエンジニアリングで世界トップレベルの実績を持つ。注目の高い水素供給事業も手がける。
2位 エスアールジータカミヤ(東証1部・2445) 建機リースや足場などのレンタル・販売の大手。創業者の高宮家のリーダーシップで業界をリード。建設需要の高まりに期待。
3位 富士フイルムホールディングス(東証1部・4901) 液晶フィルムや医療機器、医薬品を手がける。新中期計画で株主還元策の強化やROE7%目標を表明し、経営の転換を図る。
4位 GMOペイメントゲートウェイ(東証1部・3769) インターネット関連のGMOグループ企業で、日本の電子商取引企業や政府・官公庁などの決済処理サービスを手がける。
5位 リロ・ホールディング(東証1部・8876) 社宅の管理や転勤者の留守宅管理など企業の福利厚生のアウトソーシングをサポート。福利厚生の外部委託化で恩恵を受ける。
6位 共立メンテナンス(東証1部・9616) 寮やホテルを運営し、ビジネスホテル「ドーミーイン」を全国展開。東京五輪に向けた外国人観光客の増加が追い風となる。
7位 あいホールディングス(東証1部・3076) 経営者の秀でた手腕で防犯カメラシステム運営や屋外広告・看板用のカッティング機器などを幅広く手がけ、各分野で業界首位。
8位 BEENOS(東証マザーズ・3328) 「ネットプライス」などのインターネット通販サイトを運営するほか、アジア・アフリカの有望なネット企業の発掘・育成を行なう。
9位 テンプホールディングス(東証1部・2181) 人材業界2位で、傘下にテンプスタッフなどを抱える持ち株会社。人手不足が叫ばれるなか、人材流動化関連として注目。
10位 大林組(東証1部・1802) ゼネコン大手。リニア新幹線や品川―田町間の新駅再開発、羽田空港アクセス新線などJR関連の大型プロジェクトに多数参画。

201503_fujino_profile【PROFILE】
藤野英人 レオス・キャピタルワークス 取締役・最高投資責任者(CIO)
1966年生まれ。国内外の運用会社でファンドマネージャーとして活躍。22年間でのべ5700社以上を取材し、1999年には500億円を2800億円まで殖やし「伝説のカリスマファンドマネージャー」と謳われる。現在は、「ひふみ投信」を運用中。

 

※「マネーポスト」2015年春号に掲載

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