有価証券報告書からINPEXの経営を分析する
INPEXは、日本株33業種分類では鉱業に属し、エネルギー資源セクターに分類されます。
図4-2をご覧ください。有価証券報告書、その他の資料からデータをピックアップして一覧表にしています。図4?3には、INPEX の有価証券報告書の一部抜粋を掲載してあります。
有価証券報告書からデータを抜き出し、図4?2 を作成しているので、どこにどのような情報が記載されているのかを確認しておきましょう。ちなみにデータは、2023年3月末時点で確認できた最新の有価証券報告書の数値となっています。また、INPEX は2019年に決算月を3月から12月に変更したため、2019年12月期は9ヶ月間決算となっている点に気をつけてください。
それでは、一つひとつ確認していきましょう。
売上高は2020年コロナショックの際には大きく落ち込んでいるものの、そのような特殊要因を除けば右肩上がりとなっており、概ね順調です。
経常利益も売上高の伸びとあわせて伸びていますので、この点も評価できます。INPEXの利益率は極めて高く、収益力は抜群です。
ただし、資源開発というビジネスの特性上、産油国へロイヤリティ等の支払いが生じるため、最終の純利益は経常利益から大幅に減少することになります。2020年12月期では経常利益が2573億円となっていますが、上記のような収益構造のため、1株利益はマイナスになっています。とはいえ、1株利益の推移もコロナショック時を除いて、上昇傾向であることが確認できます。ただ、利益は原油価格次第という側面もあり、決して安定的ではない点には留意が必要でしょう。
1株当たり配当額は、コロナショックの時に減配となっているものの、増配傾向にあります。2022年2月に策定された「中期経営計画2022?2024」では、還元方針として、総還元性向40%以上を目途とし、1 株当たりの年間配当金の下限を30円に設定しています。
原油価格の下落等で利益が大きく減少した場合には、減配もありうると考えておいた方が無難でしょう。他方、年間配当金の下限が30円となっていることから、株価が大きく下がるようであれば、この点を念頭に置きながら投資を検討していきたいところです。
コロナショックの際には、エネルギー需要の減退予想から株価が大幅に売り込まれ、500円を割るところまで下落しました。当時は配当の下限が24円に設定されていたため、500円で投資していれば配当利回りは4.8%になっていたわけです。
2023 年12 月期の配当予想は64 円です。500 円で投資していれば、投資元本に対しての配当利回りは12.8%となっています。
たらればの話となってしまいますが、このような配当の下限が決まっている銘柄において、配当利回りを確保しつつ業績が回復した時のリターンを狙うという視点は、他のケースでも間違いなく活かせるでしょう。自己資本比率はやや減少傾向にありますが、直近では下げ止まり、60%台を維持していることから、財務健全性に問題はないと判断してよいと考えます。