中村さんは取材を重ねるうちに、経済的な問題に加えて、未経験のまま年を重ねた彼らにはもう1つ共通点があることに気がついたと話す。
「彼らのほとんどは実家暮らしで母親に身の回りの世話をしてもらい、精神的にも自立できていなかった。
特に中年男性の母親世代は専業主婦も多いうえに、父親が家庭において全権を持つ家父長制が当たり前という家も少なくなかった。“父親が母親よりも上”という家庭内の雰囲気と、母親との密すぎるコミュニケーションの中で過ごすうちにゆがんだ異性観を持つようになった男性も少なくないのではないかと思います。自立するには実家から出るしかないのですが、低収入のためそれも難しいのが現状です」(中村さん)
中学生の息子を持つ、都内在住の主婦・Mさん(52才)が言う。
「結婚するのが遅く、不妊治療も経験した私にとって、息子は唯一無二の存在です。これまでいわゆるガールフレンドのような存在を感じたことはありませんが、息子も男なので性的な欲求はあるでしょう。そこまでは理解できます。でも、彼女とセックスをするというのは非現実的。万が一、妊娠させるようなことがあったらと考えるとリスクは大きいし、童貞のままでも幸せな人生を送ってもらえればと思うことがあります」
かような母親からの“過干渉”も童貞率を増加させる遠因ともとれる。