「妊娠したらどうしよう」「失敗したらどうしよう」
一般社団法人日本家族計画協会会長で医師の北村邦夫さんも日本の夫婦関係や家族を取り巻く制度に問題があると指摘する。
「人間も動物なのでセックスして当たり前だけど、欧米と違って日本の家庭では子供の前で夫婦のスキンシップを取ることが少なく、ある程度の年齢まで性的な情報を隠そうとする。それゆえに正しい知識がわからないままセックスを神格化している若者も少なくない。『妊娠したらどうしよう』、『失敗したらどうしよう』と怯えてしまい、性交渉を楽しむことができません。
一方でフランスでは娘が15才くらいになって彼氏ができると母親が娘を婦人科に連れて行ってピルの処方をしてもらうと聞いたことがあります。つまりかなり初期の段階で情報がオープンになっているうえ、セックスにおいて男女の対等な関係を築くための教育がなされているんです。
対して日本では男女平等が進まず、避妊はコンドームか腟外射精に限られる一方で『妊娠させたのは男のせい』との考え方がいまも根強いといえます。これでは男性はその偏った責任の重さに女性を誘えなくなってしまうのも無理はない」
結婚制度もセックスにブレーキをかけていると北村さんが続ける。
「フランスやデンマーク、スウェーデンなどは婚外子を認め、結婚していなくても子供を産める環境がある一方で、日本では結婚していないと子供を持ちづらい。人工妊娠中絶手術を受けた理由を調査した際も日本人は『相手と結婚していないから』と答えるケースが多いですが、フランスやデンマークの人にとっては、到底理解できない驚くべき理由だといえます。妊娠=結婚という流れが主となる日本社会では、婚姻関係に魅力を感じない男性が性交渉に踏みとどまってしまうのかもしれません」
※女性セブン2023年8月3日号