欧米では恋愛と縁のない男性の一部は「インセル」と呼ばれるが、近年アメリカでは性愛獲得競争から脱落したインセルが「自分を相手にしない女性とモテる男性への復讐」を動機として殺人を起こす事件が起こり、社会問題化しているという。
「欧米において自分の性はアイデンティティーや自己実現の一環。性愛や恋愛をフルにこなさなければ人生を充分にこなしていないとみなされます。つまり童貞であることは“重罪”であり、だからこそインセルのような童貞が持つ破壊的なエネルギーが社会問題になる。実際、LGBTを取り巻く環境は非常にフラットである一方で、30才を過ぎて童貞だと重すぎて誰にも相談できない現実がある。
しかし日本はアニメなど二次元や疑似性愛など三次元女性の代わりとなる存在に性愛をぶつけることができる国で、カップル単位ではなくひとりで楽しめるカルチャーも少なくない。ある意味欧米よりも多様な生き方が許容されていると言えるのではないかと感じたのです」
日本の童貞はスウェーデンでも“バズってる”
実際に日本の童貞たちに接触し、フィールドワークも実施しているピーターさんは「彼らの中には童貞であることを自称しながら、明るく笑える存在であることを両立させている男性がいて、欧米ではまずありえないと驚いた」と分析する。
ピーターさんを驚愕させ、「明るく笑える日本の童貞の象徴」と太鼓判を押させたのがお笑いコンビ「春とヒコーキ」のぐんぴぃ(33才)だ。
ピーターさんは日本の童貞文化を研究するうえで「避けては通れない人物」としてぐんぴぃに熱視線を注ぎ、一時期はシェアハウスという形で「生態観察」をしていたほど。
ぐんぴぃは2019年4月に偶然ABEMAニュースの街頭インタビューで性体験の有無を問われた際、「バキバキ童貞です!」と答え、その様子がネットで拡散。予想外のブレークを果たし、YouTube「バキ童チャンネル」はフォロワーが76万人を超える。
「研究内容を本にまとめてスウェーデンで出版したところ、国内でも大きな話題を集めています。大手メディアのほぼすべてから本の取材を受けてますし、ぐんぴぃさんのABEMAニュースの街頭インタビューはスウェーデンの国営テレビのニュースでも流れて大きな話題を集めている。日本の童貞はスウェーデンでも“バズってる”んです」
※女性セブン2023年8月3日号