6月末、スイスに本拠地を置く世界経済フォーラムが「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2023」を発表した。男女平等の度合いを示すもので、日本は146か国中125位で、2022年の116位からさらに順位を落として過去最低を記録した。
とりわけ深刻なのは、政治分野で、順位は138位と世界最低レベル。その大きな要因は女性の国会議員の少なさで、衆議院における国会議員の女性比率はわずか10.3%にとどまる。
「女性にしかわからないこと」は議論の俎上にも載らない
海外に目を向けるとニュージーランドのアーダーン前首相(43才)や台湾の蔡英文総統(66才)、アメリカのカマラ・ハリス副大統領(58才)など、国を率いるリーダーとして大勢の女性が政治の世界で活躍している。
翻って岸田内閣の女性閣僚はたったの2人。過去を遡っても第1次小泉内閣と第2次安倍改造内閣での5人が最多となる。
女性議員が増えないことによる弊害は少なくない。女性と政治に詳しいジャーナリストの大門小百合さんが嘆息する。
「人口の半分は女性であるのに、立法にかかわるのは男性、それも年配の議員ばかり。つまり子育てや介護、教育など多くの女性が担う分野について、現場を知らない人が法律作りにたずさわることになります。それではいつまでたっても問題の本質にはたどりつかず、解決されないままです」
日本共産党の田村智子参議院議員も、「社会問題には女性でなければわからないことも多い」と語る。
「男性が経験しない生理や妊娠、出産、あるいは中絶や避妊は永田町ではほとんど議論されません。海外では緊急避妊薬や経口中絶薬の必要性が盛んに論じられますが、日本は立ち遅れたまま。
貧困で生理用ナプキンが買えなかったり、望まない出産をしたのちの児童虐待など、何十年も前から潜在的にある女性の悩みは政治の世界ではまったく顕在化していません。それは女性議員の数が、特に野党の中に少なく、女性の本音が大きな声にならないから。自分事ではない男性にとっては議論が難しいということもあるでしょう」
旧来の家族モデルが時代に合わなくなったことが問題の根にあると田村議員が続ける。
「国が打ち出す政策の基にあるのは、主たる家計の支え手の男性がいて、家事や育児をする補助者の女性と子供が2人くらいいる家族モデルです。非正規労働者が増えて男性が家計を支えられず、男性高齢者や若者、女性の貧困が可視化されても、自民党の中枢にいる人たち、忖度する政治は古い家族モデルのままだから社会の歪みに真摯に対応できていません」