周囲を開成・東大で固める岸田首相
官邸では総理の腹心として知られる嶋田隆・首相首席秘書官(元経産事務次官)も開成出身の東大工学部卒で、「開成出身ながら東大受験に3回失敗して早稲田に進んだ岸田総理は開成-東大という自分が辿れなかったコース出身者を好む」(官邸官僚)と言われる。周囲を開成・東大で固めようとするのはコンプレックスの裏返しに映る。
その一松氏は先輩の官邸官僚から、「長身でルックスも良いが、性格はシャイ」と評されている。が、起用されたのは学歴だけが理由ではない。
岸田首相は財務省から2人の秘書官を起用し、財政政策を担う“内政担当”と国際会議など首相の外遊に同行する“外遊担当”に役割を分けている。今回交代した内政担当の宇波弘貴氏は財務省官房長に出世し、「次の次の次官」のレールに乗ったとされる。一松氏は入省年次が上の外遊担当の先輩秘書官を飛び越えて、大先輩である宇波氏の後任の“内政担当”の秘書官に抜擢された。
そこには狙いがある。
財務省担当論説委員の経験がある元東京・中日新聞論説副主幹のジャーナリスト・長谷川幸洋氏が語る。
「一松氏は若手官僚時代に主税局の課長補佐を経験して税制の実務も心得ている。岸田政権はこれから防衛増税や少子化対策の財源確保のための増税に取り組まなければならないが、自民党内には増税慎重論が強い。そこで一松氏が官邸側の窓口、本省に戻った宇波氏が財務省側の窓口となってコンビで増税を進めるシフトを敷いた」
岸田首相が頼みとする新秘書官は、財務省が送り込んだ「増税請負人」で、首相がこれから増税を進めるには、彼の“言いなり”になるしかないという指摘だ。
※週刊ポスト2023年8月11日号