景気腰折れからの回復が期待される中国経済だが、当局の姿勢は決して“景気最優先”というわけではなさそうだ。
共産党中央紀律検査委員会(中紀委)は7月28日、行政機関である国家監察委員会(監委)と共同で、「全国医薬領域における腐敗問題を集中的に整理し、解決するためのテレビ会議」を開催した。
中紀委の諭紅秋副書記(監委副主任を兼任)は会議の中で、「行政、法の執行力を強化し、指導層幹部と実際に業務を行う職員が収賄に絡んでいないかしっかりと監視し、医薬領域の腐敗案件について、贈賄側を含め集中的に力を入れて検査する」などと発言、医薬業界に蔓延る不正腐敗を徹底的に正す姿勢を示した。
全人代常務委員会は7月25日、刑法の改正に関する審議を行った。7つの条文を修正、補足する形で、食品、医薬品、教育、医療などの領域において賄賂の認定、量刑を調整する。民営企業職員の腐敗行為に関する犯罪条項を増やすなど、以前であったら法の網を潜り抜けることができた“個人の取引を装った企業ぐるみの贈賄”なども漏れなく処罰できるようにする。
こうした刑法改正の動きに行政サイドが対応した結果、前述のテレビ会議開催となったのだが、これがネガティブサプライズとなって、本土株式市場では7月末から8月上旬にかけて、江蘇恒瑞医薬、楽普医療など、公的病院向けの事業ウエイトの大きな製薬メーカー、医療機器メーカーなどの株価が下落している。
具体的な贈収賄の手口について、ネット上で多数報告されている。例えば、中紀委、監委が5月、ホームページ上に公表した雲南省プーアル市民病院による悪質な手口を紹介してみよう。
1500万元(3億円、1元=20円で換算、以下同様)で輸入した放射線治療に使用される線形加速器システムについて、病院は総額3520万元(7億400万円)を購入費として計上、実費との差額については、医院長に対する1600万元(3億2000万円)の謝礼のほか、購入に際して決定権を持つその他の関係者たちに対する謝礼、関係者らとの飲食代、遊興費などが費用として算入されていたと伝えている。加えて、この病院ではこうした不正腐敗行為が日常的に行われており、当局の取り調べを受けて100名以上の医療関係者が収賄を行ったと自白、合計で5000万元(10億円)以上の違法な申告漏れ所得が見つかったそうだ。
これは一例にすぎず、問題の根は深い。医療機関における経営自主権が強すぎること、彼らの収賄を裁く法律が不完全であること、監督管理の強度が足りず、病院経営の透明度が低いことなどが問題点として指摘できる。