この現象を見ると、「マクロ環境は企業業績よりも株価への影響が大きい」と捉えられるだろう。日本マーケットを取り巻くマクロ環境、金利上昇懸念、原油高、悪い円安、といった事象は、株式市場全体を見ればネガティブと言わざるをえない。
一方で、この環境を追い風にして株価を上昇させている企業もある。また、このネガティブ環境をものともせず、株価を上昇させている企業もある。今回は、そのような銘柄の特徴を分析してみたい。
前年比、減収減益にもかかわらず爆騰したINPEX(1605)
INPEX(1605)は8月9日に第2四半期(2023年12月期)決算を発表し、売上、営業益は前年割れ、また、通期の見通しも売上、利益ともに前年割れの業績だった。しかし、決算翌日は前日比16.6%の爆騰を見せた。この理由は何か。
INPEXは原油価格と連動して株価が上下することで有名な企業である。原油価格は上半期こそ下落トレンドで一時は65ドル以下まで落ち込んだものの、ロシア・ウクライナの戦争が長引く環境、そして、アメリカが依然として強い経済を誇っている状況を背景に、再び80ドルを突破してきている。それに加え円安も同社には追い風となっている。
このようなマクロ環境の追い風に加え、上方修正、増配の発表を行ったことが重なり、株価は通常では見ないような上昇を遂げた。2009年11月以来、13年9か月ぶりとなる2000円台に乗せている。
現在の株価水準は、8月14日時点でのPER(株価収益率)は8.2倍、PBR(株価純資産倍率)は0.62倍、と、まだまだ割安だと見る投資家は少なくないだろう。
値動きの小さい地銀株でストップ高を見せた富山第一銀行(7184)
富山第一銀行(7184)は8月4日に第1四半期(2024年3月期)決算を発表し、利益の大幅上方修正を発表した。上期経常利益を従来発表から56.3%増、通期見通しについても25%増という大幅な上方修正の発表を行い、配当の増額修正も同時に発表した。これが好感され、翌営業日の株価は前日比21.3%上昇し、地銀銘柄にしては珍しいストップ高を付けた。
今年は日本の金融政策が正常化の方向に向かうだろうという思惑が市場関係者の中にあり、YCC(イールドカーブ・コントロール)政策の終了、その後、日本の金利が上昇していくとの予想も出ている。そういった環境では、金利が上昇することで利益が増す金融セクターに恩恵が出やすい。