電力会社は「固定価格買い取り制度」で一般家庭が屋根などに設置した太陽光パネルで発電された電気を買い取っている。消費税の制度は、企業は売り上げにかかる消費税額から、仕入れた商品・サービスにかかる消費税を控除した税額を納めるが、現在、電力会社は買い取った電力(仕入れ)にかかる消費税と、それを売った電力にかかる消費税が同額とみなされて「買い取り制度」の分の消費税負担はゼロだ。
それが10月以降は電力会社が仕入れた太陽光発電の消費税を控除するためにはインボイスをもらわなければならなくなるが、太陽光パネルを設置している一般家庭のほとんどは発電収入が1000万円以下で「免税事業者」に当たるためインボイスを発行できない。その結果、電力会社は買い取った分の消費税を仕入れ控除できず、多額の消費税を払わなければならない。
経産省は増えた消費税を電力料金に上乗せすることを認め、10月から電気料金がインボイス値上げされることになった。
“風が吹けば桶屋が儲かる”どころか、“陽が照れば消費者が損をする”という仕組みなのだ。
「太陽光パネルで発電して電力会社に売った家庭の益税分を消費者が負担させられるわけですから、消費者にすればいわれのない電気代値上げです。しかも、免税業者との取引で消費税の負担が増えるのは他の企業も同じなのに、政府が電力会社だけ優遇するのは政策的にも不公平、国民の批判を浴びるのは間違いないでしょう。
インボイス導入では細かい運用の仕方については定まっていない部分が多いから、こんなことがいろいろ起きてくる。マイナ保険証をめぐっても役所は混乱し、負担を強いられ、ミスがあると叩かれたが、インボイスはそれ以上の国民の不満と混乱を招くことになる」(荻原氏)
そのため、流通・小売り業界をはじめ、多くの業界団体からインボイスの導入延期や廃止を求める声が上がっている。
※週刊ポスト2023年9月8日号