政治ジャーナリストの野上忠興氏は、そのプロセスにはマイナ問題や原発処理水と同根の岸田内閣の無責任体質が現われていると指摘する。
「岸田内閣はマイナ問題でいきなり健康保険証廃止を打ち出して行政の混乱とミスが続出したが、担当の河野デジタル相は『制度に起因した問題ではない』と軽視して事態を悪化させた。
原発政策でも岸田首相は国民に説明なくいきなり原発の新増設へと転換し、処理水について『海洋放出決めたからよろしく』と言うだけで風評被害を止めようとしない。政策の影響を軽視して実施し、問題が起きても甘く考えて対応が後手後手に回り、結果、国民に大混乱をもたらしている。そのくせ撤回したり見直したりする決断はできない。
インボイス導入でもそれと同じ過ちを繰り返そうとしている。首相は『国民の不安は承知している』と言いながら、混乱への備えを全くしていない。10月になって国民の混乱が広がったとき、対応の責任者は鈴木財務相になるが、前任の麻生太郎氏が自分の後任に義弟を押し込んで大臣になっただけで、財政や税制は素人だから混乱を収拾する手腕は期待できそうにない。首相の従兄弟の宮沢税調会長は混乱が起きても責任を取る気はないだろう」
現在の制度で何も困ってない
そもそもこのインボイス制度は全企業や自営業者などの事務処理が膨大になり、税理士会からも「負担が大きい」と反対の声が上がり、全国の税務署の作業も過重になる。事務作業増大による経済的損失を考えると、たとえ1兆円程度の増収があるとしても経済合理性から見て全く割に合わない政策なのだ。