交通事故が原因で、さまざまな損失を被った場合、その費用をどこまで加害者に請求できるのだろうか。事故を原因とした“旅行のキャンセル料”について、実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
自動車を運転中に後ろから追突されました。相手が全面的に非を認めたので、過失割合は10対0になりました。私は首のむち打ちや背部打撲で通院することになったため、事故の10日後に出発する予定だった団体旅行をキャンセルせざるを得ませんでした。キャンセル料は約2万円です。
まだ治療中のため治療費などは受け取っていないのですが、旅行のキャンセル料も相手に請求できますか。(兵庫県・66才・主婦)
【回答】
キャンセル料が事故による損害と評価されれば、その請求は可能です。交通事故の加害者は、被害者に対して不法行為をしたことになるので、不法行為によって被害者に生じた損害を賠償する義務を負います。そこで、キャンセル料の支払いが事故によって発生したといえることが必要です。そのためには、事故とキャンセル料の間に因果関係がなくてはなりません。
因果関係とは「あれなければ、これなし」の関係ですが、法が責任を認めるのは、「通常生ずべき損害」が原則で、特別の事情によって生じた損害は、その事情を予見できたときに限って賠償の対象にします。
「風が吹けば桶屋が儲かる」というような条件関係だけで因果関係を認めると無限の責任追及の連鎖が起きかねません。そこで、被害者として保護すべき範囲(相当因果関係がある範囲)に賠償責任が限定されるのです。
交通事故でけがをすれば、入院や通院あるいは事故による精神的ショックなどでふだん通りの生活ができなくなり、予定していた行動を変更したり、取りやめたりするのは通常あることです。