そして、交通事故に遭った被害者が旅行を計画していることは特に珍しいことではなく、特別の事情ということにはできません。そうであれば、交通事故のけがの治療が必要なため、事故前に計画していた旅行に行けなくなり、中止するほかなくなることもまた普通に起きることです。その場合、キャンセル料の支払いが必要になることもあり得ることですから、事故と相当因果関係がある損害として、加害者に賠償請求できます。
事故の結果、旅行を中止した場合に、キャンセル料を損害のひとつとして賠償を認める裁判例はたくさんあります。旅行だけでなく、イベント参加などができなくなった場合のキャンセル料の損害賠償請求が認められた例もあります。
しかし、旅行に限りませんが、旅行など行事の予定日と事故との間に時間の開きがあると、早めにキャンセルすればキャンセル料の支払い義務がないこともあります。そのような場合には、適時にキャンセルできなかったことに合理的な理由がないと、キャンセル料は事故との相当因果関係がないと判断されることになり、賠償請求は認められなくなるので注意してください。
団体旅行の申込書や旅行の日程、中止の場合のキャンセル料の金額がわかる資料を準備して説明されるとよいと思います。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2023年9月14日号