国際的に見て、日本人は英語能力が著しく低いというデータがある。インバウンドでやってきた訪日外国人を対応する際も、より多くの稼ぎを求めて海外で働く際も、英語力は必須だが、英語が喋れない人が多いのが実情だ。これからの人生、誰にとっても英語は重要だと述べるのは、中学高校時代の約5年間をアメリカで過ごしたネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。では、日本人の英語のどこに問題があるのか、どうすれば英語を習得できるようになるのか、中川氏が解説する。
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英語を第2言語とする各国の英語力レベルの世界ランキング「EF EPI英語能力指数」(2022年)で日本は475点で111ヶ国中80位で、「低い英語能力」と認定されました。シリアやモザンビーク、アフガニスタンと同レベルです。1位はオランダの661点。2位はシンガポールの642点。「シングリッシュ」などとかつてはバカにされる面もありましたが、高得点です。13位のポーランドまでが「非常に高い英語能力」となっています。韓国は537点で36位、「標準的な英語能力」認定です。
同指数は成人が対象のため、多くは中学校から英語を学んだ層でしょう。G7の中で日本は最下位。そして日本に来る外国人観光客の困ったことの上位は「英語が通じない」。私もそれは常に感じています。とにかく日本人はある程度、英語は読めるものの、リスニングとスピーキングが壊滅的にできない人が多い。
それは教育に問題があると思います。とにかく英語を日本語に訳すことばかり課すのです。大学の入試でも長文を訳させます。あとは、正確な文法やら前置詞を覚えることに躍起になる。しかし、もっと重要なのは「a」と「the」の違いを知ることや、日本語と英語の構文がまったく異なることを教えることです。
先日、エンゼルスの大谷翔平選手が、対戦相手フィリーズの球団マスコット・ファナティックから“ラブコール”を受けるシーンが話題になりました。
MLBの公式サイトでは以下の説明があります。
〈Shohei Ohtani has some fun with the Phillie Phanatic before his first at-bat of the game〉
これは正確に訳す必要はありません。「大谷翔平は第1打席前にPhillie Phanaticというヤツと楽しんだ」でいいです。「some fun」を正確に訳そうとすると「いくつかの楽しみ」みたいになりますが、「some」という言葉自体が「なんか」みたいなニュアンスがあったりするので、気にしないでいい。アメリカ人はやたらと会話時に「I mean」と「You know」と入れますが、これも「あとさぁ」「やっぱさぁ」「あのね」みたいなニュアンスなんです。いちいち正確に訳すよりは、ニュアンスを理解する方がいい。