安い部屋で自炊して隅っこで寝る
結婚をしたうえで、上記のように食費を節約すれば、かなり“浮く”お金ができる。あと重要なのは、住居費です。家賃については、広さや新しさを求めなければ、東京であっても7万円台ぐらいでそれなりのところに住めます。地方であれば3万円台でも見つかるでしょう。カネを貯めたいのであれば、とにかく住居費にお金をかけないことです。
別におしゃれなアーバンライフを過ごしたいわけでもないのならば、最低限の部屋で自炊をし、小さなテーブルで二人してご飯を食べる。そして、隅っこにあるベッドで夜は寝る。カネを貯める、という目的があるなら十分です。
ただ、光熱費については無理をしないことが重要です。エアコンはガンガン使っていい。熱中症は怖いですし、医療費にお金がかかるようでは元も子もありません。何しろ健康が第一です。他で節約すればいいのです。
ここから先はその人の「人徳」が重要になってきますが、安く生きる方法は探せばあるものだなと私が感心した例をご紹介したいと思います。
私の知り合いのA氏は、某大手企業の保養施設に住んでいます。巨大な敷地で立派な邸宅の管理人を任されているのですが、そこが驚くほど安い。しかも、住環境は素晴らしい。とにかく「誰かここに住んで、掃除をして、庭掃除をしてほしい」といった目論見がその会社にはあったのでしょう。A氏はそれに手を挙げ、採用されたのです。
かくして彼は同社の人々から重宝される存在となり、様々な食材をもらったりするなどカネをあまり使わない人生に突入しています。これから少子高齢化になり、「空き家問題」も発生するから、A氏のように「管理をする」という名目で激安価格で巨大な邸宅に住むことも可能になるかもしれません。
こうして考えていくと、例えば年収300万円の人でも知恵と条件次第で年間100万円を貯めることが見えてきます。基本的には家賃を安くし、食費をパートナーと折半し、無駄な物を買わないこと。お金が貯まらないと嘆くよりは、できることから始めるほうが建設的というものです。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。