アパレル業界の雄・ファーストリテイリング(ファストリ)傘下の「ユニクロ」で、柳井正氏(74)に代わって44歳の新社長が誕生した。新卒入社の“生え抜き”サラリーマンはいかにして、「後継者候補」となったのか。【前後編の前編。後編を読む】
9月1日、塚越大介氏(44)がユニクロの社長兼COOに就任した。現体制のユニクロが発足した2005年以来、社長交代は初めてのこと。前任の柳井氏は会長兼CEOの座に就き、引き続きファストリの会長兼社長も務める。全国紙経済部記者が語る。
「ユニクロの次期社長候補として本格的に注目されるようになったのは、2022年4月の中間決算発表会見でした。登壇した塚越氏は、『ユニクロの北米事業を初めて黒字化する見通し』と自らの功績をアピール。名実ともに“柳井氏の後継者候補”に名乗りをあげた会見でした」
柳井氏といえば、日本IBM出身の玉塚元一氏(61、現ロッテホールディングス社長)やマッキンゼー出身の堂前宣夫氏(54、現良品計画社長)など、外部から優秀な人材を登用して事業を成長させてきた印象が強い。だが、塚越氏はユニクロ生え抜きの社員であり、現在74歳の柳井氏より30歳若い。
カリスマの柳井氏の後任とあって高い関心が向けられているが、今回の大抜擢は「既定路線だった」との声も聞かれる。
2022年11月まで10年間、ファストリの社外取締役を務めた京都先端科学大学教授の名和高司氏が語る。
「グループ内には次期社長を目指す同世代のライバルもいたなか、塚越さんが頭一つ抜けていた印象があります。塚越さんはファストリの幹部を育成するユニクロ大学でリーダーとして人材育成の手腕を発揮し、中国と米国のビジネスでも大きな功績を残した。柳井さんとしては、満を持して彼を登用したのでしょう」
さらに今回の登用で注目されるのが、“本丸”であるファストリ社長を巡る争いだ。