ファストリ関係者も若き塚越氏の印象は強かったと語る。
「10数年ほど前のことでしたが、柳井さんをはじめ名だたる精鋭が集い、店舗経営の構築に関するミーティングが開催されました。驚いたのは、その場にまだ30歳前後の塚越さんが招集されたことです。同世代の社員からすると雲の上の存在である幹部が勢ぞろいする会合に入社10年にも満たない社員が呼ばれるなんて、すごく腕が立つんだと思いました」
2人の息子とも「関係良好」
2015年にファストリ執行役員、2019年にグループ上席執行役員に就任するなど、猛スピードで出世を果たした塚越氏。そんな彼の最大の功績のひとつが前述した北米事業の黒字化だ。
ファストリは2001年のイギリス出店を皮切りに海外進出を進めてきたが、北米事業は長く赤字が続いた。前出のファストリ関係者が語る。
「社内的にも北米事業はお荷物状態で、マッキンゼーから来た堂前さん(堂前宣夫氏・54、現良品計画社長)が担当してもうまくいかず、『いったい誰ができるの?』という空気が広がっていました。それでも柳井さんは『絶対にやり切る』と意気込み、2020年に米ユニクロCEOに着任した塚越さんが見事にその期待に応えました。長年赤字に苦しんだ事業を立て直した手腕は本物です」
北米事業は2022年8月期に初めて黒字となった。事業立て直しの主な要因は一等地にあった不採算店舗の整理やユーザーの声に基づいたヒット商品の開発などと報じられてきたが、ファストリの元社外取締役で京都先端科学大学教授の名和高司氏は塚越氏のリーダーシップを評価する。
「塚越さんはさわやかで屈託がなく、パッションと覚悟がある人です。カリスマ経営者で上意下達の柳井さんとは違い、質問力と聞く力を駆使してスタッフをその気にさせて、200%以上の仕事をさせる“モチベーター”タイプといえる。彼はその長所を活かして、“世界一のユニクロ”に成長させていくのではないか」