アパレル業界の雄・ファーストリテイリング(ファストリ)傘下の「ユニクロ」で、柳井正氏(74)に代わって44歳の新社長が誕生した。柳井氏は会長兼CEOの座に就き、引き続きファストリの会長兼社長を務め、新社長に抜擢された塚越大介氏はユニクロの社長兼COOとして経営にあたる。カリスマ経営者が認めた塚越大介とは何者か──。【前後編の後編。前編から読む】
“雲の上の会議”に招集
塚越氏は入社前から柳井氏と不思議な縁で結ばれていた。全国紙経済部記者が語る。
「塚越氏は高校時代、スイス公文学園高等部で学んでいましたが、長男の一海さんの母校でもあります。この高校には柳井氏も思い入れがあるようで、同校を題材とした本の帯に『第一期卒業生の父親として、今後の発展を願う』との一文を寄せています」
塚越氏は武蔵工業大学(現東京都市大学)を卒業後の2002年、ファストリに入社した。当時を知る元ユニクロ社員が語る。
「塚越さんは会社説明会でユニクロの未来について熱く語る柳井さんに感銘を受けて入社を決めたと聞いています。この頃の新卒採用は200人ほどでしたが、理系の学生が入ってくるのは珍しかった」
当時は旋風を巻き起こした「フリース」ブームがピークを過ぎ、メディアでは「ユニクロ神話崩壊」が囁かれていた。柳井氏が玉塚氏に社長を譲った時期とも重なる。
冬の時代となって離職する新人も多かったなか、塚越氏はメキメキと頭角を現わしていったという。元ユニクロ社員が振り返る。
「入社から数年後、塚越さんは関東ブロックの店舗で店長をしていましたが、ブロック売り上げの上位にはいつも彼の名前がありました。ユニクロでは売り上げ規模が小さい店の店長から始まり、徐々に規模が大きく店舗運営の難易度が高い店を任されるようになります。
通常は数年おきに次の店に異動してステップアップしますが、塚越さんはすぐに駆け上がり、同世代の店員は『えっ、もうこの規模のお店を任されているの?』と何度も驚かされました。異例のスピード出世で、あっという間に店長からエリア単位で統括するスーパーバイザーになり、より大きな地区をまとめるブロックリーダーへと出世していきました」