9月1日、アパレル大手・ファーストリテイリング(以下、ファストリ)傘下のユニクロの社長兼COO(最高執行責任者)に塚越大介氏(44)が就任した。柳井正氏(74)のユニクロでの新しい役職は、会長兼CEO(最高経営責任者)となっている。
社長交代は、現体制のユニクロが発足した2005年以降では初めてのことだ。カリスマ経営者・柳井氏の後任ということもあり、塚越氏がどういった舵取りをしていくかに高い関心が向けられている。2022年まで10年間、ファストリの社外取締役を務めた京都先端科学大学教授の名和高司氏が語る。
「私にとっては非常に真っ当なノーサプライズな人事でした。私は柳井さんに事あるごとに“後任が大きなテーマである”といった話をしてきました。そうしたなかで、柳井さんの思いとしては何人か候補がいらっしゃった。
たとえば、2019年に女性としては初となるユニクロの日本事業のCEOに就任した赤井田真希さん(44)もその1人だったのでしょう。しかし、同世代のなかでは塚越さんが頭一つ抜けている。筆頭が塚越さんであることはわかっていました」
ファストリはかねてから「柳井氏の後継者選び」が課題だとされてきた。柳井氏は、2002年に玉塚元一氏(61、現ロッテHD社長)に社長の座を譲ったものの、3年後には玉塚氏を更迭し、会長兼社長として復帰。それ以降、今に至るまで社長の座にとどまり続けている。
今回、ファストリの中核事業を担うユニクロの社長に塚越氏が就任したことを受け、前出・名和氏は「今後の功績次第ではファストリ本体の社長就任もあり得る」とも話した。
その一方で、経済ジャーナリストの河野圭祐氏は「まだ違った展開もあり得るでしょう」と指摘する。
「柳井氏には長男の一海氏(49)と次男の康治氏(46)の2人の息子がいますが、両者ともにファストリの取締役で大株主(持ち株比率はそれぞれ4.68%)でもある。また柳井氏も20%以上、妻の照代さんが2.28%の株を保有しています。
柳井氏は世襲について繰り返し否定していますが、将来的には息子2人が共同でCEOに就き、塚越氏が経営の執行をCOOとして担うような体制も選択肢になり得るのではないでしょうか。いずれにせよ、塚越氏が名実ともにファストリのトップを目指すうえでは、今後、柳井家からより一層の信任を得る必要があるということでしょう」
塚越氏のユニクロ社長就任によってファストリはどう変わっていくか。“大株主・柳井家”の意向にも左右されそうだ。(了)