定年を超えても働く人はめずらしくない、今の時代。60才を超えて資格を取り、「第二の人生」を謳歌している人も多い──。
小林由紀子さん(75才)が、「ふと思い立って」イタリア語を学び始めたのは、65才のときだった。
「国際機関の秘書やアシスタントとして30年近く働き、退職後は“やりたいことを残して死にたくない”と興味が湧くことをいろいろ試してみたんです。そんなとき、20才頃にイタリアのポップス『カンツォーネ』に惹かれていたことを思い出して、『イタリア語を究めよう』と思い立ちました」(小林さん・以下同)
公益財団法人日伊協会をはじめ、東京外国語大学のイタリア語講座などを受講。日伊協会では10個の講座を受講し、そこで実用イタリア語検定があることを知り、腕試しと思って受験。すると順調に5級と4級を取得し、昨年74才にして、合格率が3割程度、日常会話はもちろん長文の執筆能力も求められる難関の3級に合格した。だがその少し前、小林さんは命にかかわる大ピンチに襲われていた。
「2021年末に顔や体の右側がまひし始めたので慌てて病院に行きました。すると『慢性硬膜下血腫』と診断され、即日手術。自分では気づかなかったけれど、どこかにぶつけたときに出血し、血が貯留していたようです。
無事に手術は成功し、1週間で退院した後はすぐにイタリア語の勉強を再開しました。医師にも“書いたりしゃべったりしてください”と言われていたので、リハビリに最適でしたね」
過去問をひたすら解き、リスニング対策としてラジオ講座やイタリアの音楽を聴いた。