日本相撲協会で職員への残業代未払い問題が発覚し、大揺れとなっている。9月27日付の『夕刊フジ』は、協会が今年5月勤務分までの少なくとも3年間、全職員約60人への時間外労働の賃金1億円以上を支払っていなかったことが報じられた。一報を受けて角界のタニマチのひとりは、「職員たちが怒るのも無理はない……」とつぶやいた。その背景に、いったい何があるのか――。
前述の記事によれば、〈協会側は職員に対し、「精算承諾書」と題した文書に署名する代わりに未払い賃金を支払う手続きを進めているが、未払いに関する協会側の謝罪がないうえ、未払い金を支払う前提として問題の「口止め」を要求するような内容に、職員の約5分の1が署名を拒否している〉という。
あるタニマチは、職員たちの行動について「無理もないこと」と評した。そして、「なにせ、親方衆はずっと協会からの手厚い手当でしっかり守られているんだから……」と呆れるように言葉を継いだ。
「理事長以下、協会執行部は元力士の親方衆で構成されています。理事は“一門の利益代表”といわれるように、親方衆に利益をもたらすために5つある一門内で選ばれていく。そのため理事会では、協会の収益を親方衆に分配するためのルールが決まっていくわけです。
たとえば部屋を運営する部屋持ち親方には協会から力士養成費や部屋維持費などが支給され、弟子が5人もいれば部屋の収支が成り立つ構造になっている。もちろん役力士や関取を誕生させれば親方にも手当が出る。横綱・照ノ富士の休場を続けても興行の看板を失いたくない協会は引退させられずにいるが、これを一番喜んでいるのは横綱を育てたことで養成奨励金として場所ごとに46万円が懐に入る伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)じゃないかな」(前出のタニマチ)
給料以外に多数支給される“手当”の数々
相撲部屋を興したり継承したりした場合、相撲協会からは相撲部屋維持費(力士1人あたり場所ごとに11.5万円)、稽古場維持費(力士1人あたり場所ごとに5.5万円)、力士養成費(幕下力士1人あたり毎月7万円)が支給される。合計すれば力士1人あたり年間186万円が部屋には入ってくる。
これに加え、親方が育てた力士が十両以上の関取になれば、協会から場所ごとに養成奨励金が支給されることになる。十両に昇進すると年間114万円(場所ごとに19万円)、幕内126万円(同21万円)、関脇・小結156万円(同26万円)、大関216万円(同36万円)、横綱276万円(同46万円)を手にすることができる。
たとえば伊勢ヶ濱部屋は全休の横綱・照ノ富士を含め、9月場所では関取が5人いたため、伊勢ヶ濱親方には養成奨励金として1場所で130万円が支給された。同部屋にはさらに幕下以下の力士が16人おり、関取を含めて21人の力士が在籍する。9月は相撲部屋維持費が241.5万円、稽古場維持費が115.5万円、力士養成費が112万円の合計469万円となる。養成奨励金の130万円を合わせて、合計599万円が9月場所で支給された計算になる。これとは別に役員待遇委員の伊勢ヶ濱親方への100.1万円の給料がある。