食料自給率38%の日本は多くの食料を海外に依存する。そうしたなかで肥料がなくなれば農家の生産に支障が生じ、ただでさえ限られる国内での生産の収量減につながりかねない。
「日本政府は急遽、モロッコやヨルダンに働きかけて協調買い入れを行ない、全体の約2割をそのルートで確保したことで、ひとまず事なきを得ました。ただ、これまで東アジアの往復で済んでいたのに対し、喜望峰、マラッカ海峡を回って運搬したわけですから、当然、かなりのコスト増にもつながったはず」(山下氏)
問題は運搬費用だけではない。前出の議員はこう話す。
「肥料工場は、農業が盛んな日本各地に点在していますが、どこも海外からの原料を水揚げするのは小さな港。中国との間で往復する小さな船で横持ち(輸送)するには便利でしたが、遠隔地から運んでくる大型の船は大きな港でないと入港できない。調達ルートを急には拡大しにくい構造があるんです」
化学肥料への依存を徐々に減らしていくべき
中国が強力な“カード”を手にしているようにも感じられるが、前出・山下氏は悲観的ではない。「相手から経済的威圧を重ねられたら、その相手との取引を回避しようという動機が働くのは当然のこと。その意味で、今回のホタテを巡る混乱は、中国依存のリスクを世に知らしめてくれた面もあると捉えています。ホタテなどについても“デリスキング(リスク回避)”をするのです」と語った。
今回のホタテの問題を巡っては、政府は加工業者の機械化を支援し、中国をスキップして日本から直接、需要地のアメリカに届ける販路開拓につなげつつある。肥料でもそうした方策が考えられると、山下氏は続ける。