著作の中で繰り返し反戦を訴え、人間はどう生きるべきかを問い続けた森村さんは実生活でも芯が強かった。千鶴子さんは思い出し笑いをしながら続ける。
「昔から細身でしたし腕力が強い方ではない人なんですけれど、いざというときに思いがけないことをするんです。印象深いのは1990年代半ば頃、フランスに旅行したときにタクシー乗り場に並んでいたときのこと。私たちを押しのけて先に乗ろうとする体格がよくてお金持ちそうなフランス人を『Nous sommes premiers!(私たちが先だ)』ってピシャッてやりこめて。
それを見ていたタクシーの運転手さんが喜んじゃって、フランス人よりもずっと小柄で身なりもいいとは言えない私たちを優先してくれて。そのときは“男らしくて頼りになるな”なんて思いましたね」
(後編に続く)
※女性セブン2023年10月12・19日号