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作家・森村誠一さん、晩年の老人性うつ病・認知症との闘い 妻・千鶴子さんは「それでも主人は幸せだったと思います」

森村誠一さんと62年連れ添った妻・千鶴子さん

森村誠一さんと62年連れ添った妻・千鶴子さん(撮影/菅井淳子)

 時を同じくして森村さんは著書『老いる意味 うつ、勇気、夢』で、自身の症状を公表するようになった。自らの言葉の力でそれを奪おうとする病気に対峙しようとしたのだ。

《「病気になってもいいじゃないか」「悩んでもいいじゃないか」「他人に迷惑をかけてもいいじゃないか」。老いるということはそういうことなのです。ただ、夢だけは持ちたい》 《「誰だって歳を取る。病気もする」。だから「私も頑張っている。皆さんも一緒に頑張りましょうと言いたかったのです》

 生涯にわたって人間はどう生きるべきかを小説を通じて問い続けた森村さんによる“自らがどう病気や老いと闘っているか”を赤裸々に綴った同書はベストセラーとなった。しかしそんな中でも、認知症の症状は進行していく。要介護3となり、デイサービスや訪問看護を利用せざるを得ない状況になる。

「だけど行くのを嫌がるんです。行ったとしても、みんなで一緒に歌を歌うことや、名前を呼ばれて返事をすることに抵抗があったようで、『森村さーん』って呼ばれても知らん顔しているんですよ。

 その頃、私がスーパーで買い物するときについてきてくれるのが日課だったのだけれど、店内で迷子になってしまうこともあって。

 これは本人が亡くなった後、近所のかたからうかがったのですが、店内で『いないの、いないの』と必死で私を捜していたこともあったそうで、ああ、怖い思いをさせていたのかもしれないと胸が締め付けられました」

 自宅での介護に限界を感じていた千鶴子さんが老人ホームを探していた今年1月のこと。千鶴子さんは椅子から落ちて骨折し、入院を余儀なくされる。

「この頃、主人は要介護5の状態になっていたので私が入院すると主人のお世話ができない。主人にも一時的に入院してもらったんです。この日までデイサービスのお迎えが来ると逃げるようにサッと階段を駆け上がって2階に行くくらい足腰は強かったので、入院しても大丈夫だろうと思っていたんですが、寝たきりの生活を1週間続けただけでかなり体が弱ってしまって。そのまま自宅に戻ることなく、入院したまま息を引き取りました。

 最初の頃はお見舞いに行ったとき、『こっちに来い』というふうに手招きすることもありましたが、徐々に意識がなくなって、最期は肺炎で亡くなりました」

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