衆議院議長・細田博之氏の「逃げ得」は許されるのか。体調不良を理由に議長を辞任する意向を固めたと報じられた2日後、地元紙・山陰中央新報の取材に応じた細田氏は、「政治家としては元気そのもの」と健康をアピールし、次期衆院選に出馬すると明らかにした。有権者にとってはよくわからない“政治決断”であり、ここで一度、細田氏が庶民感覚からズレた言動を繰り返してきたことを思い出しておく必要があるだろう。
細田氏は2021年11月に議長に就任。2022年夏には旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との密接な関係が指摘されたが、議長であることを理由に党の調査を免れ、接点があったことだけは書面で認めたものの、自ら国民の前に出て説明することを避けてきた。
また、2022年5月にあった自民党議員のパーティーでの発言も見逃せない。「議員定数を増やすべき」が持論の細田氏は、「議長になっても毎月もらう歳費は100万円しかないんです。『しか』というと怒られちゃうけど。会社の社長は1億円は必ずもらうんですよ」と発言し、強い批判を浴びた。
この時は「今後は立場を自覚して、発言を控える」と殊勝な姿勢を見せたと伝えられたが、そもそも「歳費は100万円しかない」という発言の事実関係自体が疑わしい。コロナ禍で「国会議員も国民の痛みを分かち合う」として議長を含む国会議員の「歳費2割カット」が続いていたが、それでも議長の歳費は173万6000円。しかも2割カットは2022年7月末で終了。議員歳費は月額129万4000円、細田氏など議長職は同217万円に復元されている。
臨時国会で旧統一教会問題を蒸し返されたくなかった
そもそも国会議員には、歳費とは別に支給され、“第2の給料”と呼ばれる月100万円の「調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通滞在費)」もある。一時は見直しの議論も浮上したが、そうした「身を切る改革」はまったくの尻すぼみ。何に使ったかを明らかにする「使途公開」、使わなかった分を国に返す「未使用分の国庫返納」は、いずれも6月の通常国会でも見送りで終わらせている。格安議員宿舎や無料航空券、新幹線やグリーン車乗り放題のJRパスなども含め、議員の特権がそのまま温存され、物価高に直面する国民にとっては納得できない思いが高まって当然だろう。