裁量取引とシストレのいいとこ取りプログラム
スプレッドとともに各社がしのぎを削ったサービスに、システムトレード(シストレ)がある。特に初心者にもハードルが低い「ミラートレーダー」というプラットフォームが大ヒットし、新規参入も相次いだ。各社は投資家が取引する際に選択する「ストラテジー」という取引プログラムの本数や成績、検索のしやすさなどを競い、「パック」や「ポートフォリオ」と呼ばれるストラテジーの最適な組み合わせを提案するなど、こちらも競争は白熱した。
その中でも「勝ち組」とされたのが、インヴァスト証券だ。取り扱いストラテジーの数や充実したランキング、検索機能などで、ミラートレーダー派投資家の絶大な支持を集めた。
その同社が14年春、新しいシストレのプログラムを発表し注目を集めた。裁量取引とシストレの「いいとこ取り」を実現したという「トライオート」というサービスだ。
ミラートレーダーの場合、開発元のイスラエル企業から各社が提供を受けているのに対し、トライオートはインヴァスト証券が独自開発したプログラムである。相場予測や戦略の組み立てなど「人間の得意な分野」は投資家が担い、リスク管理や決済など「人間が苦手な分野」は、オートパイロットと呼ばれるシステムが担当するという。
戦略や決済ルールを選択するのは投資家の自由
羊飼いも早速試してみたのだが、なかなか面白いという印象を持った。まずは通貨ペアを選び、今後の相場を上昇か、下降か、レンジかを予想して指定する。さらに、エントリーの方針を選択し、決済のスタイルも、「コツコツ」「バランス」「一発」からひとつ、「標準」「勝率重視」「利大重視」からひとつ選ぶ。また、何pipsで利益確定と損切りをするか、そして決済の後にどういうタイミングで新規注文を行なうか、といった微調整も可能だ。利益確定と損切りの設定は必須で、塩漬けや長期保有はできないしくみになっている。
ミラートレーダーのように任せきりではなく、投資家が戦略や決済ルールを指示し、実際の取引だけを任せるのがトライオートの特徴だ。相場の予想は当たっているのになかなか利益をあげられない人や、取引ルールは決めていても感情が邪魔をして実行できないという人にも向いているのではないだろうか。
また、指定したルールに従った注文を自動で繰り返すのも興味深い。利益が出ているときはオートパイロットと相場がマッチしているということであり、指定した最大連敗数に達しない限りはその取引を続けてくれるのだ。
ただし、ミラートレーダーと同様、通常のFX取引に比べてスプレッドはかなり広く設定されている。固定ではないため公式な数値は公表されていないが、羊飼いが米ドル/円で取引した際は3銭程度の印象を受けた。
実際にどれぐらいの利益を出せるかというと相場の状況次第ではあるが、個々の投資家の戦略をここまで簡単にシステム化できるツールはこれまでになく、様々な可能性を秘めていると感じる。まだスタートしてまもないサービスだが、投資家の支持をどれだけ得られるか、追随する業者が出てFXの新しい潮流が生まれるのか、注目したい。
〝半自動〟の新型システムトレード「トライオート」の取引手順
【STEP.1】通貨ペアと売買方針を選ぶ
通貨ペアを指定し、相場の行方を「上昇」、「下降」、「レンジ」の中から予測して選び、売買方針を決める。
【STEP.2】エントリータイプと損益スタイルを選ぶ
売買方針に沿って取引するが押し目も拾っていく「ベーシック」、慎重に順張りする「フォロー」、反発を狙う「カウンター」などからエントリータイプを選択。上昇と下降は各3種類、レンジでは1種類のみ。損益スタイルは、利食いと損切りの幅や割合に応じて「コツコツ」「バランス」「一発」など9種類設定されている損益スタイルの中からひとつを選ぶ。
【STEP.3】確認して発注する
※「マネーポスト」2014年夏号に掲載