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残業代未払い・パワハラ問題で揺れる相撲協会 背景にある「縁故重視」の体質とどう向き合うか

 元協会職員のひとりは、こうした問題が発覚した背景に「職員がどう登用されるか」の問題があると話す。協会の一般職員は約60人。その職員のトップにあたるのが主事となる。

「500億円近い資産の運用をはじめ、経理面のすべてを取り仕切るのが主事ですが、理事長が外部から招聘してくるのが通例です。理事長が代わることで、力関係が一変することが珍しくない。たとえば、北の湖理事長が2008年に力士の大麻問題で辞任して武蔵川・新理事長(元横綱・三重ノ海)が就任すると、辣腕を振るっていた当時の主事が定年延長もできず、追われるように協会を去った。

 新事業部長に就任した伊勢ノ海親方(元関脇・藤ノ川)が推薦する新主事が外部から招聘され、引き継ぎの間、それまでの主事を見張るかのうように事業部の中に危機管理担当を新設。それまでの主事の横の席に担当親方の高田川親方(元関脇・安芸乃島)と玉ノ井親方(元大関・栃東)を座らせるなどしていた」

濃い人間関係の世界

 大相撲の世界はとりわけ、人間関係や縁故など“コネ”を重視する体質が色濃く残っていることで知られる。力士が引退後も協会に残るために年寄名跡を取得しようにも、所属部屋の協会内での発言力などが影響する。両国国技館の入場券をさばく相撲茶屋にしても特定の一門と関係が深いことなどが指摘されてきた。前出の元協会職員は「一般職員の採用の問題もある」と話す。

「わずか60人程度の組織なので、定期的に広く職員を募ることがないわけですが、長く縁故採用が根付いていて、親方やタニマチの親族というケースも少なくない。“職員の中にも一門がある”と言われるほど。そういう人間関係が背景にあるため、ハラスメントや残業代不払いの問題があっても、表立って不満を口にしにくいのでしょう。外部人材を登用したコンプライアンス委員会がなければ、今回の問題も表沙汰にならなかったのかもしれない」

 その意味では、コンプライアンス委員会が機能したと言えるのかもしれないが、処分を経て相撲協会がどう体質を改善していけるか、今後問われていくことになる。(了)


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